朗読家、川島昭恵さんの活動をアシスト。日赤医療センターは初めてなので緊張するなぁ、と茶目っ気たっぷりに話す昭恵さんは幼い頃に感染症が原因で視力を失ったアーティスト。見えないどころか、こころの目で周りを深く感じ見る、見るという次元を超えてすべてを洞察しているという感じ。
子どもの前に座る。名前を聞く。ゆっくり待ってから名前を呼ぶ。自己紹介。ゆっくりゆっくり。
私ね、目が見えないんだ。だから字を読むのではなく点字を読むね。 点字って知ってる? 点字本のブツブツを触ってもらう。
言葉の出ない子どもにも、ゆったりと話しかけながら何かしらの反応を待つ。空気の動きを感じとると、そうか、じゃ読むね。1ページごとに「めくるよ」と声かけ。優しく優しく・・。
小さな子どもには点字付き絵本。文章の上に透き通った点字が並ぶ。指で読んだら絵のページを横になっている子どもの高さや角度に合わせてゆっくり見せる。見せながらお話のイメージを対話を通して子どもと作っていく。
小学中学年以上の子どもにはイメージだけの世界。
真っ白なツルツルの紙に点字の凸凹が並んでいる。色なんかない。あるのは登場人物さながらの声の調子と行間の広がり。そして指先でなぞりながら子どもに向いて語る美しい笑顔だけ。
どんな力があるんだろう。昭恵さんは朗読する、というより、読みながら目の前の人と魂の交流をしているみたい。
フリースクール、ハンセン病療養施設等の傾聴ボランティアをしていたこともあるという。どんな立場の人にも”寄り添う”懐の深さや深い愛情があふれている。”共感”という言葉が浮かぶ。
確かに物語が進んでいるのに、そこに聞く人とのやりとりが確かに、確かに存在している。
病室は魔法にかけられたみたいに穏やかな心地よい風が渡り、そこにいる者の心を洗っていく。
昭恵さんの読む顔をじいっと見つめてその表情から目を話さない子どもたち。
ひとつお話が終わるともうひとつ・・。もっと読んでほしくなる。素直な子どものリクエストに、昭恵さんも子どもに戻ったみたい。
美しい心に人の心は洗われる。
昨日の嫌な出来事も、さっきの小さないざこざもすっかり洗い流してくれる。
美しい心に出会えた日は心が軽やかになってスキップさえしたくなる。こだわりはどこかへ消え、うつむいた顔は空を見上げる。
美しい子どもたちと、子どものように美しい心の持ち主と。
圧倒され、ほんの少し私の心も綺麗になったみたい。