「今」に没頭する時間が、子どもを、親を、病院を変えた
これは帯に書かれた文章です。
ただ治療を受ける立場を超えて、
アートを通して夢中になれる時間が
SHJの活動を通して生まれた・・・。
そしてそれが闘病生活を変え
そこに関わる人たちが
立場の垣根を超えて関わり合い
自分らしくいられるようになった・・・。
現場に起こるそんな変化を綴っています。
これからの小児医療現場のさらなる変革と
全人医療への希望がこの帯文に表れています。
「子どもとアーティストが出会ったら」
本書で伝えたいことは
アートを通して自分らしくいられることで
治療に前向きに立ち向かうことができる
ということだけではありません。
それは
サブタイトル「子どもとアーティストが出会ったら」
にも表れています。
子どもがアーティストに出会ったら
ではなくて
子どもとアーティストが出会ったら
です。
この微妙な違いに、
実は子どもとアーティストの
とてもフラットな関係性が表されています。
誰もが支援する側される側
意外に思われるかもしれませんが、
子どもは支援される人であるだけではなく
支援する人でもあり、
アーティストは支援する人であるだけでなくて
支援される人でもあります。
子どもはアーティストの
絶妙なファシリテーションにより
痛みや不安を忘れて自らアーティストになる。
これを「子どもが支援される」と表すならば、
病いや障がいと闘いながら精一杯今を生きる子どもたちから
生きることについてのレッスンを受けるアーティストは
支援される立場だと言うことができるでしょう。
立場を行き来することで
心地よい関係性が生まれ、
相手を敬う気持ちと自己有用感がミックスされた
とても安定した豊かな精神が生まれるような印象があります。
活動中の子どもとアーティストの生き生きと楽しそうな表情からは、
互いに持ちつ持たれつのいい関係という図が浮かんできます。
互いがフラットな関係を意識できる現場こそ
支援が成功している場所なのだと思います。
支援する、とは？
「互いがフラットな関係を意識できる現場こそ支援が成功している場所」
私見ですが、
これは、支援の現場と言われる場所においての真理をついているように思えるのです。
支援しているつもりが
相手から大切なことを学ぶ、ということはよくあることです。
院内学級に配属され
長期入院やたび重なる手術の経験を生かして
子どもたちに寄り添い支援するのだ、いう意気込みは
壮絶な闘病生活を押して学んだり自分の世界を広げようとする姿を前に
とんだ勘違いだと思い知らされた初登校日。
彼らの生きる姿に平伏す自分がいました。
支援してあげますというスタンスで臨み
見事に打ち砕かれた苦い経験です。
その日から彼らから学ぶ日々となったのです。
本書が伝えたいこと
どんなことがあっても
病いや障がいがあっても
子どもは豊かに成長していける。
さらにアートや学びを通した豊かな時間が、
病いや障がいと闘う子どもの成長を後押しする、ということ。
だから私たち大人は、可能な限りその機会を工夫し
保障していかなくてはならない
という思いが、多くの現場で共有されますように。
子どもたちの未来のために手をとり合えたら、とそう思います。
「夢中になれる小児病棟」をたくさん作るために！
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価 格:1760 円(税込)
出版社:英治出版
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