つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

誰もが支援する側される側-2-

交通事故による

硬膜外(脳の髄膜の外層)血腫

肋骨多発性骨折と血気胸

により生死の境を彷徨ったあと

奇跡的に生還したことを思い返す時があります。

命が助かったことにまずは感謝するも

だんだんと自分の存在価値に疑問を持つようになり

ただただ、周りに迷惑をかけているだけなのではないか

と、自分の非力さを腹立たしくさえ思っていた時のことを。

まして

人の役に立つなどということは

自分には縁のないことだし

発想としてまずなかった

というのが正直なところです。

他人の力なしでは何もできない自分を

歯がゆさと卑屈さ

そして空虚な気持ちが襲い続けました。

だから病気になって入院している子どもが

一番辛いはずの自分を脇に置いて

家族に対する申し訳ない気持ちや

我慢しなくてはならない気持ちが

自然身についてしまうこと

とてもよくわかります。

それは自分を責めるだけではなく

やり場のない怒りや諦めという負の連鎖を作ります。

大人ならともかく

成長期にある子どもが

自分を責めたり

誰のせいでもないのに

人に迷惑をかけているなどと思ってしまうことは

心に深く大きな傷を負わせてしまうことになり

人格形成という大切な過程に置いて

あってはならないことだし

その後の人生や幸福感を大きく左右するでしょう。

一般病棟に移ってしばらくしてからのこと。

4人部屋の向かいに外国人が入院してきました。

日本語はほとんどできないので通訳をお願いしたい・・・

症状や病名などの専門用語は医学英語辞典を見ればわかるけれど

実際、どうやって使ったらいいか、勉強中なんです・・・

私が事故前に翻訳をしていたことを

どこからか聞きつけた看護師さんが

困った顔をしながらベッドサイドにやってきて

そう言いました。

身体中に新鮮な何かが一巡したような瞬間でした。

カーテンが開かれ

ジュリアという女性を紹介されました。

入院当日、家族一緒にベッド周りを整えているところでした。

「ヨロシクオネガイシマス」

とにこやかに日本語を話してくれました。

新鮮な何かと一緒に、

今度は気持ちがググッと前を向かせるような空気の流れを感じたのです。

それからはカーテンを開けている時間が長くなりました。

挨拶やちょっとした会話を通して

どんなことが必要かな・・と

考えることを始め

なんとか動く左手を動かし

体調を表す簡単な単語集や

容態の聞き方会話リスト作りに

がぜん張り切ったものでした。

主体的に動くことを身体が思い出したのです。

2週間もするとジュリアは退院となりましたが

取り残されたという感じは全くありませんでした。

それどころか

お礼にと手渡された

サンパギータ(フィリピンの国花 ジャスミンの一種)の花柄の寝衣と一緒に

胸がスッキリするような清々しい気持ちをプレゼントしてくれました。

もう会うこともない一期一会でしたが

失った何かを見つけてくれた

そんな貴重な出会いでした。

今でもキラキラ光るジュリアの瞳を思い出します。

その辺りから

そうか、自分にも役に立てることがある

と少しずつ俯いた気持ちを抜け出し

あ、私生きてる・・・

という実感を持てるようになりました。

人は誰かの役に立つことを生きがいにする場合が多いもの。

それだけに

支援される立場に追いやられると

そこから抜け出す気力がどんどん失せてしまう

しかしなんでもいい、一旦

自分にできることに気づいた瞬間から

目の前の世界が一変するのです。

自分はいつも誰かに世話をしてもらいながら

回復のために

決められた検査や治療やリハビリを受ける身。

つまり、支援される立場。

でもいつも支えてくれている看護師さんを

まだまだ入院の続く力無い自分でも

助けることができる。

支援するだけの立場でなく

困ったことがあれば支援される立場に。

支援される立場と決めてかかっていたはずの側が

実は人を助けることができる。

こんな経験から

こどもたちも

入院している弱者というレッテルを

貼られる必要もなければ

まして

自ら貼る必要は全くないと言い切れます。

命と向き合って生きるその姿が

訪れるボランティアたちに

一番大切なことを教えてくれているし

それぞれ一人一人が抱えている何かに

大きなヒントを与えてくれている。

病や障がいと闘う子どもたちへ。

その頑張りをたくさんのひとに伝え

たくさんの人を救う力になっていることを忘れないでください。

逆に力をくれるから私たちボランティアは病棟を

繰り返し訪問させてもらっています。

痛くても辛くても

芸術を通して今を目一杯楽しむ力があること

それが困難に向き合う力になることを信じながら。

なぜ自分が・・

と一旦は悔しく思った時代が

いつの日か大きな力となって

人生を切り開いていってくれますように

と願いながら。

誰もが支援する側であり

支援される側。

互いを支え合うことも

誰かに支えてもらったことを今度は別の人にお返しすることだってできる。

👦 👦 👦 👦 👦

子どもに役割のある病院があります。

→2017/9/1投稿〜ガチャポンのある小児病棟

闘病しながらもどこかみんな生き生きとした小児病棟。どこの病院でも実践してほしい・・・。

誰もが支援する側される側-1-

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