将棋界最多の29連勝を達成した最年少棋士、藤井四段が、東京新聞主催王位戦予選初勝利を飾りました。
藤井四段の集中力について以前取り上げた時、彼の受けたモンテッソーリ教育について触れましたが、改めてモンテッソーリ教育について書いていきたいと思います。
モンテッソーリの発見・・とは「自分一人でできるように手伝ってください!」と叫んでいる子どもの事実です。そこに着目してこの教育法は生み出されました。
「自分で!自分で!」「僕がやる!」「「私がする!」という子どもの声は誰もが聞いている言葉。うるさいな、と自分でやろうとする子どもの手を振り払って「あっち行ってなさい」「危ないから触っちゃダメ」「あなたには無理!」などと言って子どもを諦めさせるのが”邪魔者”を振り払う大人の常套手段。大きな声や手早い仕草で子どもの心を行動を一蹴してしまいます。子どもは大人に対して常に弱い立場にいます。特に幼児期はその弱い立場に甘んじて大人に頼らなければ生きていけないから、大人のどんな勝手な言葉にも屈せざるをえません。大人はそこにいるだけで子どもにとって脅威、という言葉を子育て中に母からよく聞かされていました。母にも反省があったのでしょうか。大人には我が子が幼児の時期ほど勝手に権威を振るい、弱くて素直な子供の前でいつの間にか自分の思い通りに支配するようになりがちです。子供のためにこれだけしてやっている・・という傲慢が言い訳となっています。それがかえって子どもの意欲を削いでしまっていることに気づかなくてはなりません。私も子どもたちが小さい頃、「また仕事が増えるな」と思いながら、モンテの言葉を思い出し工夫していたのを覚えています。
子どもは大人の支配よりはるかに強い自然の力に支配されている、とモンテッソーリは言います。大人は子どもが自分で成し遂げねばならない宿題を自然からもらっていることを見極め、それに立ち向かっていくのを助けなければならないと。
モンテッソーリは、さらにこう言っています。
「服を着せたり顔を洗ってやったりすることは奴隷のすることです。子どもが自分の心と体を自分で使って、その時期に成し遂げなくてはならない課題に取り組めるよう、大人は励まし続けることです。大人がしてやるのではなくて、子どもに自分でさせるのです」
ではそのために大人は子どものためにどうすればいいのでしょうか。それは一人でできるような環境を整えてやるということです。世の中はすべて大人サイズにできていて大人の都合に合わせた環境です。だからトラブルが起こります。子どもの興味のもつような身の回りのものを子どものために適切は形や大きさに整えてやること。子供を援助する心構えを持つことが前提にあれば工夫がかえって楽しくなるかもしれません。子どもをよく観察し何を感じているのか、何をしたいのか教えてもらうことです。
「私がやる!」という言葉には子どもの人格の尊厳があり自立への強い憧れがあります。モンテッソーリが着目したのは、普遍的な子どもの生命力です。時代が変わっても文化が発達しても変わらない子どもの生命力に畏敬の念を抱き、自らよく生きようとする命を助けるのが大人の仕事。なんという深い愛に満ちているのでしょう。
「モンテッソーリの発見」をもっと深く知りたい方へ
「モンテッソーリの発見 Maria Montessori Her Life and Work」 E.M.スタンディング著、クラウス・ルーメル監修
著者スタンディングは教育学者で、モンテッソーリに多大な影響を受け、モンテッソーリが他界するまでモンテッソーリ教育法の普及、発展に大きな功績を残しました。