子どもが大切にされる平和な社会へ

〜子どもの宇宙〜

一人ひとりの子どもの中に無限の広がりを持つ宇宙がある

心理学者 河合隼雄氏(1928-2007)の言葉です。

子どもだけでなく、すべての人には宇宙があり、その宇宙が交わったり、互いにとどまったりすることで価値観を共有し、共感をもとに創造的な人間関係が生まれる、と常々思っているので氏の言葉には深く共感します。

特に、無限の広がり、すなわち無限の可能性を持った子どもたちは、大人とは比べられないほどの広大な宇宙を持っているということでしょう。

河合隼雄氏は著書『子どもの宇宙』(1987)で、児童文学の名作を通して「子どもの宇宙」について述べています。子育て中に見つけてそれ以来愛読書となっていますが、偶然にも長女が生まれた年に氏が執筆したものとわかり、ますます愛着のわく一冊となりました。

『子どもの宇宙』の中で子どもと大人の関係、ひいては子どもが実は大人をどう見ているかを直球で著している箇所を抜粋します。

子どもたちの澄んだ目は、この宇宙を見据えて、日々新たな発見をしている。しかし、残念なことに、子ども達はその宇宙の発見について、大人たちにはあまり話してくれない。うっかりそのようなことをすると、無理解な大人たちが、自分たちの宇宙を破壊しにかかることを、彼らが何となく感じているからだろう。

大人になる、ということは、子どものときに持っていた素晴らし宇宙の存在を忘れることではないか

子どもの宇宙の存在について、我々が知ろうと努力するときは、自分自身の宇宙について忘れていたことを思い出したり、新しい発見をしたりすることにもなる。子どもの宇宙への探索は、おのずから自己の世界への探索につながってくる。

教員の頃、そしてスマイリングホスピタルジャパンを立ち上げ活動してく中で、多くの子どもたちと出会い、関わっていくうち、自然と幼い頃の原風景に思いを馳せること、大自然に浸ることが多くなりました。

自然の中でその営みに神秘を感じたり、子どもみたいにはしゃいだり。これはまさしく、河合氏の言う「子どもの宇宙への探索、自己の世界への探索」なのでしょう。

年をとると子どもに戻る、と言いますが、これは単に涙もろくなる、また自己中心的になる「退行」を意味するだけでなく、大いなる自然に対して素直になり、そして子どもの頃の宇宙に遊びに行き、自分を取り戻すという意味もあるような気がします。

参考文献:『子どもの宇宙』河合隼雄