SHJヒストリー

SHJヒストリー28 ~なんちゃってアーティストの次は・・~

活動を開始して1年ほど経ち、なんちゃってアーティストもすっかり鳴りを潜めた頃。

そして、当日の担当アーティストが体調を崩して病院へ行けなくても他のアーティストが「それなら私が!」と代打を引き受けてくれることも定着した頃。

もっぱらアシスタントとして子どもに接する日々が続き、ホッとするもちょっぴり偽アーティストとして子どもたちに囲まれていたのを眩しく懐かしむ頃。

病院のボランティアコーディネータから電話がかかり、

「アンパンマンが大好きな2歳のMちゃんがNICUにいる。ご家族がどうしてもアンパンマンに来てもらって励ましてほしいと。ぜひ叶えてあげたいけど、なんとかしてくれない?」

とても急いでいる様子。

やなせたかし事務所に連絡しても都合が合わないとのこと。

アンパンマンに変身できるコスプレアーティストはいないか、ということなのだろう。

「なんとかします!」

できるかどうか、ではなくてやらなければ、やりたい!という気持ちで見切り発車を続けてきた性分が再びむくむく台頭!。

アンパンマンぽく、であれば版権などに抵触しないだろう。ええい、もたもたしてられない!

事務所で眠っているアンパンマン色のフエルトを引っ張り出し、これで着ぐるみを作ろうと決心。

赤・・鼻 パンツ

オレンジ・・頰  

黄・・胸のアップリケ ベルト ブーツ

茶  マント

そして、

たまたまソファにあった肌色のクッションを分解して中の詰め物を頭が入る分だけ取り出し、かぶりものに作り変え、眉、目、鼻、ほっぺをアップリケ。

口から外が見えるようにしました。

引き出しから覗いていたユニクロ長袖赤Tシャツを上着に。

長靴とサンタの衣装セットに入っていたベルトに黄色のフエルトを貼って。

黄色の軍手だけは100均で調達。

よし!

CDラジカセをボランティア室で借りて、アンパンマンマーチをかけながらMちゃんの個室へ。

ベッドの周りはご両親、看護師、医師がぐるりと囲んでいました。

気恥ずかしさは吹っ飛んで、できるかぎり声を似せ、

「Mちゃん、僕アンパンマン。遊びに来たよ!」

みんなでアンパンマンマーチを歌うと、ご両親は涙を流していました。

Mちゃん、アンパンマンが来たよ、家族やみんなと一緒にそばにいるよ!

記念撮影は衣装を毛布の上に載せて。

「スタッフが毎日アンパンマンになってMちゃんを励ましたい。しばらく貸して欲しい」

との言葉に更に嬉しくなってすべて置いて帰りました。

心の中で、

~愛と勇気だけが友達さ~

と歌いながら帰路につきました。

いえ、声が出ていたかもしれません。

今再び事務所のキャビネットで出番を待つなんちゃってアンパンマン。

今日は天気がいいからお日様に当てて日向ぼっこでもしましょうか。

続く・・。

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