休学していた通信制大学の復学について決断の時が迫っていた。
リハビリ通院から帰宅した昼下がり、陽の当たらないダイニングテーブルにひとり、大学からの書類を前に途方にくれた。どのくらいのあいだ自問しただろう。
まず右手が使えないとなると、膨大な数のレポートを仕上げることができるのか。
年に4回の試験に向けた準備のため机に向かいながら背中の痛みに耐えられるのか。
3週間の教育実習は?
待って。どうしてもとりたかった教員免許ではなかったの?
これ以上の敗北感は味わいたくない。
でも今の体力と痛みでは自信がない。
無理
でも…
無理
いいの?
夢を諦めるの?
堂々巡りのうちに、陽は傾き西日が書類を照らした。
どうするつもり?とばかりに。
そろそろ帰宅する子どもたちを迎えるため、思い悩む暗い顔はここまで。
あと一週間考えよう。
答えを先延ばしにしたままソファに横たわり、肩の緊張を預けた。
愛犬ラッキーがソファに飛び乗り、待ってましたとばかりに私の顔を舐める。大丈夫だよ、と優しい眼差しをくれるラッキーを抱きしめて目を閉じた。
ただいま!
息子の元気な声が静寂を破り、ラッキーは一目散に階段を降りていった。
そんな日々がしばらく続いた。