「ペシャワール会」の現地代表で、
医師の中村哲さんが
銃撃に倒れて1年以上経つ。
もともと医師としてアフガンで
活動を始めた中村さんは
2003年から同東部で用水路の建設を開始。
医療から灌漑や農業支援へと活動を広げたのは、
アフガンを大干ばつが襲い、
農地が砂漠化するのを目の当たりにしたからだと聞く。
「病気の背景には食料不足と栄養失調がある。
『100の診療所より、1本の用水路を』と、考え
これまで約27キロを開通させた。
用水路は1万6500ヘクタールを潤し、
砂漠には緑地を回復させた。
現在は農民65万人の暮らしを支えている」(朝日新聞DIGITALより)。
そんな中村哲さんの座右の銘が
「照一隅(一隅を照らす)」。
もともと医師だから
目の前の患者一人一人に手を当てるのが仕事。
人々を救う、というのではなく、まさしく”この人”を救う、
そんな考え方といえるだろうか。
現地での一人一人の生活やその背景に目を配り
病気の原因や根本にある問題に対処することにより
その人の困りごとが解決に向かう、
とそんな風に考え、
干ばつの際に灌漑用水の建設に駆り立てられたのだと思う。
「いま、ここ」
を大切にする人なのだなあと強く感じる。
中村さんの地道な活動は、
「世界中を豊かにするとか、
全人類を救うとだとか、
そういうことではなくて、
一隅、自分の身の回りから
照らしていってください。
別に大きなことはせずとも、
ひとつひとつできることをしていく以外に
何かを実現する方法はない」
という考え方、
つまり
「照一隅」という言葉
に現れている。
芸術や学びを通して
重い障がいの子どもや
難病等で長期病気と闘う子どもを支援する、
ということに躍起になっている自分だが
はてさていま自分がやっていることが
どれだけの力になっているのか、
ということをしばしば立ち止まって考えることがあるが、
中村哲さんのこの言葉には大いに励まされる。
「いま自分にできることに集中すること」
将来に不安を感じたり
重圧に負けそうになったりするときは
そんな風に自分に言い聞かせている私にとって
中村さんの言葉は
包容力と優しさに包まれたような気持ちにさせてくれる。
社会を変えるとか、
全国津々浦々に活動を広げる、
などという壮大な目標も頭の隅には起きつつも
いま自分のできることをコツコツと
実行していくことのみが
道を作る、
そして人々が皆そんな生き方をすれば
社会は自ずと良くなっていく、
そう思う。
偉大な人を失ったが
その生き様や哲学は
私たちの心の拠り所として
いつまでも存在する。
灼熱の太陽のもと刻まれた
目尻の深いしわをたたえた温かな笑顔は
胸に刻まれたままだ。
一隅を照らし続けた中村さん、
世界中の人々に大きな感動と勇気を与え続けていることを
今頃は空から見ているだろうか。
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