胃に開けた穴から栄養注入するなどの医療的ケアを受けながら過ごし、言葉が発せない子どもたちも、学校に行けば表情は生き生きとし、体調が落ち着くことが多いものです。
友達の声や学校のおとを聞けば気持ちも上向きになるのでしょう。
そんなエピソードの一つを
5/12投稿の「奇跡が奇跡でなくなるとき」
で紹介しました。
しかし、重度の障がいを持つ子どもたちを取り巻く社会、行政の対応には折に触れ「現状を本当にわかっているのか!」と思わざるをえません。
新生児医療の発達で助かる命が増え、在宅の医療的ケアは増加しています。厚生労働省の研究班によると、医療的ケアが必要な0~19歳の子どもは推計で1万七千人余り、10年前の1.8倍だそうです。
特に十分な呼吸ができず、酸素吸入や人口呼吸器などの呼吸管理が必要な子が急増し、重症化が進んでいるとも。
また、在宅ケアを担うのは主に母親。
医療機器に囲まれ、十分な医療知識を持たない中、愛情を支えに長時間のケアを続けています。
夜中も、たんの吸引や褥瘡を防ぐための体位変換などのために、平均睡眠時間は4時間にも満たない。自分の健康に不安を感じ、腰痛、腱鞘炎、鬱などの自覚症状がある母親も多いといいます。
このような医療的ケア児や母親の事例は新聞でよく見かけます。
障がいのある子どもたちにとって、学校に通うのは一番の楽しみ。
特別支援学校は、医療的ケアを受ける子ども、寝たきりで発語のない子どもにとっても、先生や他の生徒との触れ合いや学び合いを通して情緒の安定や喜びがあり、社会性や体力を養う場所です。
医療的ケアの担い手、母親たちにとっても、気分転換、母親同士の情報交換、そして仲間との息抜きの場とも言えます。
特別支援学校への通学は主にスクールバスですが、医療的ケアの必要な子どもは対象外である地域が多いのです。そんな子どもは在宅訪問教育部門に籍を置くことになる場合が多く、東京都では週平均6時間の授業。利用できたとしても、長時間の通学時間中に体調が悪くなり救急搬送となる場合もあると聞きます。
ただでさえ、体験や主体的に活動する機会が限られている中、教育の機会確保、通学の安全確保という健常児にはあたり前にある権利が、障がい児には保障されていないのが悔しい。
障害者差別解消法、合理的配慮は、子どもたちにとって、残念ながら今の状態では絵に描いた餅でしかないようです。
障がいのある子どもたちが当たり前に学校へ通うためには・・ということにもっともっと行政は向き合ってほしい。実態を知ってほしい。
ケアを受けながらも子どもは日々成長するのです。
健常児の通う学校の3校に1校でもいい。専任の校長を置く特別支援学校を併設しては?
地域密着化することで長時間のルートをスクールバスで過ごす必要がなくなり、2割の活用にとどまっている副籍制度(地域の普通校と特別支援学校の交流制度(→10/3投稿「副籍制度、機能してる?」参照)が活発になり、ノーマライゼーションにも寄与できるでしょう。
実現させるためには看護師など医療者の配置、という大きな課題にぶつかるでしょう。十分な人材を確保し、学校で行える医療的ケアの緩和(→10/18 投稿「医療的ケア児と家族の現状」 9/15投稿「医療的ケア児にもっと目を向けて!」参照)にも着手してほしい。進歩する医療技術に伴う医療的ケア児の増加、そしてその対応は待ったなし。
改革を本気で!進めていかなくてはならないのは自明のこと。
教育問題の中でも最重要課題の1つだと痛切に感じます。