前回綴った「アートの力」。
アートの持つ力については
アートと子どもをテーマに団体を立ち上げたこともあり
度々ブログで触れている。
院内学級で芸術が子どもたちを笑顔にすることを
度々目にしていた頃は
本屋に行けばアートを題材にしたストーリーに手が伸びていた。
ちょうどそんな頃に手にとったのが
〜「あなたには夢がある 小さなアトリエから始まったスラム街の奇跡」
ビル・ストリックランド+ヴァンス・ローズ著 英治出版〜
→5/7投稿〜「あなたには夢がある」〜
事務所の書棚に収まったこの本に目がとまり
吸い寄せられるようにして
12年ぶりに読んでみた。
著者は無目的に通っていた高校の美術教師に才能を見出され
やがて芸術を通して行き場を失った人たちを救うという大事業を成し遂げる。
我が高校時代と重ねてみた。
小さい頃から物作りが好きだった私は当然のように選択科目は美術を選んだ。
ホームルーム教室の1.5倍ほどある美術室の壁には
イーゼルやらキャンバスやらが雑然と立てかけられ
キャビネットにはデッサン用の石膏像がずらり。
生徒たちの未完成の作品が棚に並べられて乾かしてある。
奥の準備室には美術部員の作品だろうか
油絵の大作がいくつも重ねて立てかけてある。
他の教室とは違った
なんとも言えない開放感
なんだかそこだけ外界と隔てられ
時間の流れすら違って見えた。
自由な創造性と可能性に満ちた不思議な異空間。
別の教科の先生たちから
一歩距離をおくかのように
どこか冷めていて
でもアートには熱い美術教師。
そこが共感を誘った。
独自の世界観に魅力を感じて勝手に親しみを感じていた。
その頃から芸術家が好きだったんだな、きっと。
アーティストには
決して群れない自立したオーラを感じるのだ。
そんな我が(⁉︎)美術教師にとって
美術室はみんなが集える庭
そして準備室は先生の城
とすると職員室は
先生にとっては混沌とした社会そのものだったのかな、と今思う。
自分らしくいられるために向かう先が
庭の向こうにある美術準備室だったのかもしれない。
もっとも、先生に確かめたわけではない
私だけが作り上げたイメージに過ぎないが。
その頃自分はどうだったかというと
「あなたには夢がある」の著者同様、
特に目的も楽しみも見いだせず無為に過ごしていたし
家庭のゴタゴタを言い訳に投げやりだった。
そんななか
「美大に行かないか?」と
先生に声をかけられた時のことを
思い出す。
自分がいて、だけど自分がいない
空虚で地に足がついていないようなふわふわした自分に
初めて自分の実態を、少なくとも自分という存在の一部を
他者から教えられらたような感じ。
先生は私の中に何かを感じてくれたのだと思う。
著者は美術教師の
「君には才能がある」
という言葉に素直に意味を汲み取り
期待に沿うことで奇跡を起こした。
自分の知らない自分を他者が教えてくれる瞬間
というものをどう生かすかで
人生はまるで変わってしまう
ということがこの本に書かれているが、
そうだなあ、
私があの時の先生の言葉をちゃんと受け止めていたなら
また違った人生だっただろう、と思う。
もしかしたら
というより
かなり高い確率で
アーティストとして
今の活動をしていたかもしれない。
結局たどり着くのは
ここ
なのかもしれない。
引き寄せられるものに従って
生きるのが人生かな、などと思ったりする。
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