つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

初任の頃、重度障がいのNくんとの思い出

今でも思い出す初任の頃の生徒たち

教員を辞めてもう10年も経つというのに

そのまた7年前、

初任として院内学級に配属されたころのことを時々思い出す。

初めて担任したTくん(本の中では優くん〔仮名〕)のことは

ブログを始めて間もないころに綴り

著書「夢中になれる小児病棟」でも

今の活動を始めた原点として触れている。

〜SHJヒストリー4 始めて担任したTくんは心の先生〜そんな東大病院での生活の中で特に印象に残っているのが、教員になって初めて担任として受け持ったTくんとの出会いです。 難病を発症して...

しかし、あのころ、担任として受け持った子どもたちの他に、

週に2,3時間の授業をさせてもらった子どもたちのことも

鮮明に覚えていて懐かしく思い出す。

重症心身障がいのN君との出会い

そんな中でも強烈な印象となって私の中に

居続けてくれるNくんがいる。

特別支援学校の教員としての覚悟を決める力をくれた

もうひとりの私の先生。

いい年をした免許取り立ての新人に

重い障がいの生徒の授業が務まるのか・・・

それは現場にとって当然の危惧だっただろう。

5歳のときにインフルエンザ脳症に罹り

脳に重度の障がいを負った5年生のTくんのベッドサイドに、

オリエンテーションの日に

ベテラン教員ふたりに連れて行かれた。

ベッドと掛け布団の隙間から

たくさんの管がモニターなどの機器に向かって伸びていた。

ほどんど身体を動かすことができず

瞬きもしない。

目の乾燥を防ぐために

黄色い透明のゼリーが眼球にたっぷりと塗られている。

そんなNくんの姿を前にした私の反応を見て、

務まるのかを判断する、そんな目的だったことは、

病棟を後にし職員室に戻る途中

世間話に花を咲かせるふたりの後を追うように歩きながら

自分なりに察した。

Nくんのベッドサイド

次の日、再びN君のところへ、

ふたりの教員が私を誘った。

まず

ベッドサイドに設置されたモニターが示す

サチュレーションの値(動脈血酸素飽和度SpO2)と脈拍数について

講義を受けた。

Nくんの指先に装着されたパルスオキシメーターが測定する数値が、

モニターに表示される仕組みだ。

サチュレーションの値が正常でない場合は授業そのものはお休み。

Nくんの場合、脈拍数により覚醒しているのか

眠っているのかを判断するのだと。

その後授業を続けるうち、眠っているようだと判断した看護師は

「Nくん、授業だよ!先生来てるよ!起きなさい!」

などと声かけをしてくれたことも

ふと思い出した。

N君との授業

さて授業の最初は「からだのとりくみ」といって、

筋肉の硬直を進行させないためのマッサージのようなことをする。

今日の天気はね〜

とか

今日学校に来る途中、桜の花が満開だったよ〜

など、他愛のない話をしながら

信頼関係を築く大切なひとときとなる。

〜〜〜〜

さて今回のNくん訪問は先輩教員による審査2日目。

体調のチェックや体の取り組みについての講義の後、

授業の内容について女性教員が切り出した。

「Nくんね、元気だったころ、英語が好きで、

ぜひ授業をしてほしいとお母さんから言われてるの。

担当してもらえる?」

先輩教員からのリクエストに

英語教員の私がやらずに誰がやる?

と二つ返事したのも覚えている。

しかし内心は戸惑いばかり。

いきなり! 

何ができるの? と試された。

戸惑いは混乱に変わったが、何かしなくてはと、

何の準備もなかった私がひらめいたのは

“Hello, How Are You?”

を歌いながらの自己紹介と

“Head, Shoulders, Knees and Toes”

という英語遊び歌だった。

「Nくん、英語が大好きなんだってね!

この歌、知ってるよね!」

と声かけしたあと、

Nくんの頭、肩、膝、つま先に触れながら

軽やかに歌ってみせた。

そうっとゆっくり、。。

モニターの数値が示す限り、体調は落ち着いた状態だと

先輩教員から教わり、

それを確認すると

少し速度をあげて歌い・・・

そしてさらに速く、また段々とゆっくりと。。

これでいいのか

サンプルとして行ったショートセッション。

この状況で

小学校英語指導者資格を取った時の勉強など

何の役にも立たない。

Nくん、聞いてくれてるかな。

私が体に触れたのは嫌ではなかったかな。

英語の授業、といきなり言われて

はいはい、と英語の歌や会話をするのはまだ先のはず。

彼との関係を作ってコミュニケーションの手段を

見つけなくてはならない。

お母さん曰く、

「英語が大好きだからたくさん歌を聴かせてあげてください。

そして簡単な日常会話は英語教室で習っていたから

英語でどんどん話しかけてください」

それはわかった。

しかし、私は彼の反応が欲しかったし

わかり合いたかった。

重度障がいの子どもとの活動、

これでいいのか・・・

そんな悩みを抱えながら

自分なりに掴み取っていくしかないと察した。

それまで信頼関係を作ってきた先輩教員と彼との関係性へ追いつけるはずもない。

彼との関係を深めようと

放課後もN君の担任を誘って彼の部屋を訪ねることが多くなった。

微細な動きでT君は何を伝えようとしているのか。

その後、週に2時間の英語の時間は

コンスタントに続けることはなく

程なくNくんは退院していった。

教員って

あの時、もっとNくんとの時間が続いていたら

言葉を超えたコミュニケーションについて

Nくんから深く学ばせてもらえたかもしれない。

教員・・・

目の前の子どもから学び

豊かな学び合いを追求し実践する職業だ。

少なくとも私自身に関しては

免許を取ったその日から

教える人になるのではなく

目の前の子どもから

教えてもらう人になった。

*****

Nくんのことを浮かべながら、

教員としてスタートを切ったあの頃を今日も思い出している。

やはり今の自分を作った原点は

病院で出会った子どもたちだと改めて思う。

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