〜離す日が来るのはわかっているから、もう少しつないでいようと思った〜
いつか我が子の人生に自分がいなくなってしまう・・・
そんな日を覚悟しながら
我が子との今を
精一杯楽しもうという溢れる思いをエッセーにした作品
「すぐそこのたからもの」よしもとばなな著（幻冬舎文庫）
を自分の子育て期と重ねて読みました。
「寒い午後だったけれど、つないでいる手が温かかった。
離す日が来るのはわかっているから、もう少しつないでいようと思った」
（すぐそこのたからものより抜粋）
切なさに胸が潰れそうになりました。
いつの間にか過ぎ去った愛おしい日々
小さくってむちむちで
温かくて、ベタベタしてて・・
そんな愛おしい手を包み込むように
繋ぎながらどこへでも出かけて行った
そんな子育て期は
先のことを心配したり
昨日の失敗を悔やんだり
そんな余裕もなく過ぎていった
無我夢中の毎日でした。
今思えば切なく胸に蘇ります。
久しぶりの「親子水いらず」
先週、本当に本当に久しぶりに
娘と息子が訪ねてくれ、半日一緒に過ごしました。
娘は大学病院の周産期医療センターで
主任助産師として毎日新しい命と出逢いながら
三人の母として大奮闘の日々を送ります。
一番下の息子が4月に小学校に上がりました。
入学式の朝、
「保育園がいい！」
と言って泣いたけど、三人目ともなれば
そんな我が子を受け止めて
温かく見守り送り出す余裕をみせる
貫禄がつきました。
不規則なoffの日と、
私の休日が珍しく重なったため
「パスタ作って待ってるね〜」
「嬉しい！じゃ何か甘いもの買ってく〜」
ということになりました。
息子は留学、海外勤務を経て
今はフリーで広告の仕事をしています。
五島列島と東京を行き来する自由人。
こちらも多忙な中、
「ご飯食べに行く〜」
とやってきた前日の晩に
「お姉ちゃん来るなら泊まってく〜」
となり、
十数年ぶりに親子三人水いらずで顔を合わせました。
逆転人生？
シワも増えて目も見えにくくなった
おばあちゃん姿の私。
そして早々に独り立ちし、
すっかり大人になった眩しい二人。
むちむちぷくぷくの手を繋いで歩いた
あの頃とは逆転したこの光景を
俯瞰して対比し苦笑い。
そして色々あった数十年を思い返しながら
この子たちがいたから生きてこられたと、
はしゃぎおしゃべりする二人を横目に
目が潤みました。
母親って
よしもとさんとは違って
離すことなど想像もしなかった二人の手。
いつからだったのだろう。
もう繋ぐこともなくなったし
ぎゅっと抱きしめることもなくなりました。
目の前にいる二人への愛おしさは
全く変わらないのは不思議です。
母親ってこういうものなんでしょうね。
二人がただ元気で
小さな幸せに気づいては感謝して生きてくれれば
もう何もいらない、と思います。
手を繋いで始まり手を繋いで終わる
繋いだ手はもう離してしまったけれど
さいごはまた繋いでくれるんだろうな。
人生って
大切なひとと手を繋いで始まり
離してはまた繋いで終わる。
昨年の今頃、
手をぎゅっと握って別れた母。
この子たちとはもう少し
離したままでいたい。
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