在宅訪問学習支援事業の一環で作成した
「バリアフリーみんなの教材図鑑」。
ここに載っている教材の中に
「ボコボコチェーン」
というのがあります。
”思わず引っ張りたくなる心地よい振動”と銘打って。
一見、何の役に立つんだろう
え?学習の教材??
と思ってしまう方は多いのでは?
事実、特別支援といっても
病弱部門が専門だった私は
思わず引っ張りたくなることで主体性を引き出し
引っ張ることでどうなるか、という因果関係を
体感的につかむことができる・・・
というところまでしか、この教材の用途が浮かんできませんでした。
図鑑の説明によると
チェーンを振動が感じられる方向に引っ張ることで、
✔️ 方向性のある手の動きを引き出す(特定の方向に引っ張らないとチェーンが抜けない)
✔️ チェーンを引き抜き続けるという連続性・持続性のある操作を引き出す
✔️ 引いて手を離して別の手で持って引いて、の繰り返しという両手の協応を引き出す
✔️ 眼と手の協応を促す
というねらいが書かれています。
なるほど!です。
事務所に置いてある教材を
20年前に遭遇した交通事故の後遺症のために狭くなってしまった右腕の
可動域を広げるリハビリになる
などといって時々使わせてもらっていますが
とんでもない奥の深さがあるんですね。
とても科学的に考えられていて
物事の原理や概念を感覚的に体得できるのです。
身体の機能向上などという私の使い方は
ほんの入り口に過ぎなかったのだとわかります。
さて、昨年7月に再開した在宅訪問学習支援「学びサポート」は
今年1月に入ってからの爆発的な感染拡大を受けて
再び休止しています。
そんな時にもいつも支援員が訪問時に行なっていることを
ご家庭やヘルパーさんと一緒にできるようにと
教材の貸し出しを行なっています。
この「ボコボコチェーン」に家庭で熱心に取り組んでいるKくんのお母さんから
嬉しい報告がありました。
上に書いたねらいをはるかに超えた
ボコボコチェーンの効用をKくんが自ら開発したのです。
それは
大好きな友達の名前をボコボコチェーンを一回引くごとに
1文字ずつ声に出しながら手繰っていくということをしていた時のこと。
1回の引きの長さが長過ぎるとチェーンが足りなくなる、
短すぎると余る、
といったことを繰り返しているうちに
ちょうどいい長さを発見した、というのです。
眼と手の協応を生かして長さの概念を得る
一つの方法を発見したのです。
教材作成者も、支援員も意図していなかった教材の使い方や効果を
生徒自身が示してくれることは度々ありますが、
今回のKくんの開発は、支援員のねらいを
はるかに超えた効用を私たちに教えてくれただけではなく
子どもの可能性の高さを改めて教えてくれました。
この話をされている時のお母さんの嬉しそうなこと。
SHJの教材を通して、できることが本当に増えたんです!
と。
できることが増えるどころか
自ら教材の新たなねらいまで発見してしまうのですから
やっぱり子どもは天才だな、と思います。
〜〜〜〜〜
教材はSMILING STOREにて販売しており
その理念をトップページに載せています。
それによると
「子どもたちは夢中に取り組む姿でその有用性を伝えてくれる共同開発者です。
スマイリングストアで販売している教材は子どもたちに鍛え抜かれた
選りすぐりのものばかりです。
教材の素晴らしさを多くの方に体験してほしいと願っています」
と。
もはや共同開発者というより、
支援員の先生、ですね!
子どもと教材・・・
その間にはどんな可能性が広がっているのでしょう。