つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

医師が思いを短歌に 〜治療最「前線」〜📖

救急科専門医であり歌人でもある医師が

歌集を刊行する。

題して「前線」

先日東京新聞で紹介されていた。

まず釘付けになった作品は

 世の中の 風当たりにも耐えるよう 防護ガウンを今日も着込んで

世間の偏見を表現したという。

2度目の救急事態宣言が出され

全国で感染拡大が続く現状に

「自分の歌を発信することで、人々の行動を変えたい」

との思いを込めた、と紙面で伝えている。

言葉にすること

言葉で伝えること

言葉を書き記すことは

日々、文章を書くことを習慣にしている私にとって

一つひとつの言葉の選び方に苦労するが

心から楽しい作業である。

しかし、私のように要領を得ずだらだらと書いてしまうのとは違う。

五・七・五・七・七の

短歌という手法で

短く凝縮されたメッセージは

耳に

視覚的に

簡潔にシンプルに直接的に

ピンポイントで

伝わってくる。

そんなペンネーム 犬養楓さんの

今の医療者の現状、思いを端的に伝える短歌を

紹介したくて

紙面で紹介されている作品の一部を

そのまま抜粋させていただくことにした。

  県越える 祖父の葬儀の参列を 自粛するなり 医療者として

  咽頭を ぐいと拭った綿棒に 百万人の死の炎(ほむら)見ゆ

  毎日の 死者数よりも意味を持つ ICUを生きて出た人

  「どうしても 無理なら他をあたります」 受け入れ要請 二件を拒む

  何もかも シェアする時代の週末に ふたりでひとつの人工呼吸器

  この波を 越えたら出そうと退職の 書類が三度 眠る引き出し

医療従事者として

外出する人の減らない理不尽さや

緊張の続く過酷さに逃げ出したくなることもある

とは紙面が語る犬養さんの思い。

心の叫びとでも感じられる次の一句からは特に切実さが伝わる。

 マスクでも 感謝でもなくお金でもない ただ普通の日常が欲し

医療者の逼迫状況を

1/22に投稿した「ゴールが見えない」に綴った。

犬養さんは同著にて次の句も載せている。

マラソンと 同じさ遥かゴールまで 次の電柱 目指して走る

犬養楓著「前線」

2月7日、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)より発売。