なんて美しい絵本なんだろう！
ノルウェーの小説家・児童書作家、
スタイン・エーリック・ルンデ 著、
「ボートみたいなパパのうで」（英治出版）
北欧ノルウェー“最も美しい本”受賞作とだけあって
言葉一つひとつに、
絵の一つひとつにもため息が出るほどの
静けさ、美しさ、閑寂さが込められている。
ひと言で言えば、グリーフケアの物語
となるだろうか。
各ページにふんだんに施された
描画と切り絵が織りなすアートは
平面への描画と立体的な切り絵と
切り絵が作る影のコラボレーション。
ラフに切り取られたモチーフ・・・
不安定な配置・・・
アートを介して
ぼくとパパの不安な気持ちを物語っているのかもしれない。
勝手な解釈と感想文
眠れずに
パパのうでに抱かれて外に出る。
家にいて横になっていたって
目に映るもの全て
触れるもの全て
そして匂いやら空気までもが
二度と会うことのない
ママを思い出させるから？
だから
外に出て
うんと遠い星の世界、
遥かかなたに思いを投げる。
本当は確かめたい
お母さんは目覚めないの？
でも、ママがここに居ないこと
それはなぜかを認めたくないから
そんなの嘘だよね
と誰にともなくこころの中で聞いてみる。
こころの中でだけだ
本当のことは知りたくない。
話を逸らせておきたい。
全ての存在を確かめようとするかのように
（全てとはもちろんママも入ってる）
パパに色々質問してみる。
狐のことや
鳥のことを
そして本当は一番パパに聞きたかったことを
悲しさを押し殺して聞いてみる。
本当にお母さんは目覚めないの？
パパにそっと聞いてみる。
大丈夫だよ
とにかく一人じゃないんだ
生きていこう。
〜＊〜＊〜＊〜
ぼくの悲しみが中心に展開するストーリーの中で、
パパはボートになってすっぽりとぼくを守る。
まるでぼくの寂しさをぜんぶ引き受けようとしているかのように
パパの孤独さ悲しさが強烈なまでに伝わってくる。
不意に
鳥にあげたパンをキツネがたべちゃったらどうしよう
と心配するぼく。
大丈夫だよ、また置いてやればいい
とパパ。
家に戻ってもまだ眠れない
大丈夫だよ、
とパパ。
本当？
ああ、本当さ。
空が白々としてきたころ
ソファでボートみたいなパパのうでに抱かれながら眠るぼく
眠ったね、大丈夫だね。
外では赤い鳥がパンをついばんでいる。
ほらね、全て大丈夫なんだよ。
絵本との出会いがくれるもの
勝手な解釈である。
切り絵が織りなす静寂な情景に
自分なりに僕とパパの心を重ねてみた。
美しい絵本に出会い
心洗われた気持ちだ。
他の誰かのその人なりの解釈と
分かち合ってみたい。
〜＊〜＊〜
絵本。
大人こそ読むべきものかもしれない。
忙殺の中に置き忘れた何か
先を急ぎすぎて気づかず素通りしていた大切なものに
再会できるかもしれない。
もしかしたら、忘れていた大切なものとは
自分との対話なのかもしれない。
絵本がそれをくれる。
「ボートみたいなパパのうで」
一読を勧めたい。
じんわりと自分と対話するために。
そして
手に取るアートワークとして
お気に入りの場所にそっと置いてみても。
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