つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

〜幸せの経済学〜

・・・グローバリズムからローカリズムへ・・・

~あなたは豊かさをどんな物差しで測りますか~

ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ監督*のドキュメンタリー映画「幸せの経済学」を観ました。

ヘレナさんは聞きます。

この村で一番貧しいひとの家に案内して、と。

「この村に一番貧しいひとはいません」

と村人。

30年前まで外国人立入禁止地域だったヒマラヤの辺境ラダックという村でのこと。

貧しさとか豊かさは誰が決めるんだろう。

近代的な国から見たら貧しそうに見える農村。物は豊富でないけれど、自給自足、必要な生活の糧は自分たちで賄い、地域で助け合う暮らしは人間の基本的な営み。

足るを知る生き方は、堂々としていて誇り高い。

土地の文化や習慣を守り継承していく、素朴な、そしてプリミティブな生活。

本当の幸せ、豊かさとはこういうことかな、と思わされます。

しかし、グローバリズムが台頭し、情報化の波が及ぶようになり、豊かだったはずの農村が一変します。

華やかなコマーシャルにより、近代的な生活を知り自分たちの生活と比較するようになると自分たちは貧しいのだ、とそれまでのアイデンティティを否定し、近代社会に憧れるようになります。

数年経って、ヘレナさんの問いに、「貧しい人はいない」と答えた村人は言います。

「貧しい私たちを助けてください」と。

映像は衝撃的でした。

こんなに変わってしまうのか、と。

外国企業は開発援助の名目でインフラを容赦なく整備していく。

便利で豊かになったと思うのもほんの束の間。情報や物が入ってくるとそこには奪い合いや競争が生まれ、格差が発生する。持つ者はもっと欲しがり、そうでない者には妬みが。やがて競争や争い、ひいては原理主義や紛争をもたらす。

このカラクリを見事なプレゼンテーションで映像化したこのドキュメンタリー。

資本主義やグローバリズムの盲点を暴き、主導者の言う豊かさとは、じつは本当の豊かさではないことをクリアに伝えています。

環境問題、人口問題、避難民問題、紛争、核開発・・・地球はもう行き着くところまでいき飽和状態だと悲観する人がいます。

しかし、諦める必要はないのだ、と明るい気持ちにさせてくれる、後味は実に爽快です。

グローバル化が、人間の一番美しく原始的な営みを否定し、一番醜い妬み、争いを産む。

そのことに気づいた人たちが、自ら立ち上がり、本当の幸せを追求するようになったからです。

世界中で。もちろん、私たちの国、日本でも。人間とはなんと賢く希望に満ちた生き物でしょう。

本当の幸せの見つけかた。

それはローカリズム。地域で完成させること。

地産地消、自給自足。

顔の見える人間関係や流通システム。

そこにはありがとうを言う相手が目の前にいる、喜んでくれる人がそばで笑っている。全てに実感が持てる幸せ。

なんて無駄のない合理的なかたち。

巨大資本で画一的になった世の中が、

温かい血の通った感性豊かな人間らしい世の中にもどされつつある、ウキウキします。

*ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ( Helena Norberg-Hodge )

スウェーデン生まれ。ISEC(International Society for Ecology and Culture)創設者、代表。世界中に広がるローカリゼーション運動のパイオニアで、グローバル経済がもたらす文化と農業に与える影響についての研究の第一人者。1975年、インドのラダック地方が観光客に開放された時、最初に入った海外からの訪問者の一人で、言語学者として、ラダック語の英語訳辞典を制作。以来、ラダックの暮らしに魅了され、毎年ラダックで暮らすようになる。そしてラダックで暮らす人々と共に、失われつつある文化や環境を保全するプロジェクトLEDeG ( The Ladakh Ecological Development Group)を開始。この活動が評価され1986年に、もう一つのノーベル賞と知られ、持続可能で公正な地球社会実現のために斬新で重要な貢献をした人々に与えられるライト・ライブリフッド賞を1986年に受賞。ダライ・ラマ法王の訪問も受けている。著書「ラダック懐かしい未来(Ancient Futures)」は日本語を含む40の言語に翻訳され、世界各国で高い評価を得ている。
* ISEC: http://www.isec.org.uk/ ・・・
映画公式サイトEconomics of Happinessより抜粋