命の選別につながるという議論が絶えない
新出生前診断。
先日新聞で
新出生前診断実施施設拡大に向け
小児科医との連携を強める内容を盛り込むことで
一歩前進したと報道があった。
出生前診断とは・・・
広義の意味では
妊娠の有無を調べることから
胎児の位置や環境、生育状況と健康度を診るためのもの。
そのうち
昨今議論を賑わせているのが
胎児の遺伝子検査。
胎児の遺伝子に異常があるかどうか出生前に診断を行うもの。
日本では2013年に臨床研究として導入された。
日本産婦人科学会が
実施できる施設を増やす指針を打ち立てたが
日本小児科学会と日本人類遺伝学会が反対し
当面見送られることになっていた。
→2019/7/3投稿~新出生前診断 拡大見送りに安堵
しかし今回、
両学会の同意を得た、という。
高齢出産の増加という背景を踏まえ
適切な形で検査をと、
研修を受けた産婦人科医がいれば
小規模な施設でも実施可能にするという新指針のもと
開業医を含め、全国で70ヶ所ほど
認定施設が増える可能性がある。
この検査が
母体や胎児を守るため、という目的であれば
その必要性は十分にある。
異常が認められた場合母体や胎児に危険が及ぶため、
周産期を慎重に臨みましょう、
というのならば。
しかしそうではない。
胎児の染色体異常をみるためのもの。
異常が認められた場合、
「生まれてくる子どものことを知る」
「その後の生活への心構えを持つ」
のが目的とうたいながら
実際は産む産まないの決断を妊婦に迫ることになる。
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まず検査ありきで全てが進められていることに
釈然としないのは私だけか。
検査の必要性自体に大きな疑問がある。
より良い説明、より良いカウンセリング体制を
そして
カウンセリングで結果を伝え
その後の判断を支援するというが
判断を支援・・・って
同じひとつの命に優劣があること前提だ。
また、
この検査の存在が妊婦を苦しめることにもなる。
妊娠を告げられ無上の喜びに浸る間も無く
検査を受けるべきか
受けるのをやめようか
という選択を突きつけられ
深く悩む人が多いという。
また、
染色体異常の我が子を育てる上での
心構えを持たされるということは
覚悟させられ
情報の海に投げ出され
産むことへの重大な決断を迫られ・・
その結果、
産むか産まないか迷う。
産まない選択をしたがゆえに自分を責め続けることもあるだろう。
次の妊娠はどうする?
といった苦悩も。
何れにしても
子を産み育てることへ
高いハードルを作ることになる。
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子育ては知識でするものではない。
生まれてきた子どもを育て育てられるのが育児。
「我が子との出会いをただ楽しみにする」
それが出産じゃないのか。
検査の存在がそれを阻んでいるように思う。
陰性という結果に安堵し喜ぶ・・
というのもなぜか残念。
そこに
障害があるないの暗黙の分断が見えるからだ。
妊娠という素晴らしい経験を通して
命をテーマに分断、選別、差別
そういった意識が
当事者や家族に無意識に植え付けられそうで、とても怖い。
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新出生前診断は
人間のおごりとしか思えない。
何より命の軽視だ。
女性蔑視にも見える。
自分で判断、または周りから勧められて検査を受け
いざ陽性判定により産まないことを選択した場合
命を選別したと自分を責めるかもしれない。
そして周りから責められるとしたらそれは当事者の女性だ。
社会は女性にこれほど大きな決断と重荷を背負わせている
ということを認識すべきである。
*****
院内学級にいた頃
そして現在の病院での活動において
染色体異常の子どもとの出会いは多い。
素晴らしい絵を描く人。
書家になった人。
ダンスのとびきり上手な若者。
緻密な作業を根気よくやり通す人。
彼らの素晴らしさをまず知って欲しい。
周りを育て
周りから大切に育てられ
才能を伸ばす人は多い。
頭から
選択の対象になどしないでと叫びたい。
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2018/2/8投稿「出生前診断」と「旧優生保護法への批判」の矛盾
2018/3/7投稿 ~新出生前診断、一般診療に!?
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