「出生前診断」と「旧優生保護法への批判」の矛盾

1月29日、日本産婦人科学会が出生前診断実施施設を拡大する方針を固めた、という報道があった。妊婦の年齢制限や対象疾患の要件緩和についても検討するという。認定施設が少ないことから、無認定のクリニックで年齢を問わず検査を実施していることを問題視、この拡大を検討することにしたそうだ。

受診者は毎年増え続け、染色体異常の疑いがある「陽性」と判定荒れた妊婦の9割が人工妊娠中絶を選択したという。

一方、時を置かずして1月31日の記事。旧優生保護法のもと、障害などを理由に9歳、10歳児に不妊手術が施されたと新聞に載っていた。宮城県に残る「優性手術台帳」に旧法に従って手術を受けた人の氏名や疾患名などが記載されているという。15歳で強制手術をされたとして60歳代の女性が損害賠償を求める訴訟を起こしたことで浮き彫りになり、謝罪や補償を求める動きが広がりそうだとある。

後者は非人道的措置として批判の的となっていることは当然な話で、怒りがこみ上げる。しかし、出生前検診についての問題提起はといえば、「陽性と判定されながら確定診断で異常がないケースもあり、安易な命の選別につながる」という指摘だ。

そもそも、検査が存在すること自体、差別意識が根底にある安易な命の選別につながると思う。実施施設を拡大すれば、さらに「安易な命の選別」が助長されはしないか。

染色体異常の方の存在そのものを否定することになり、旧優生保護法の考え方と重なりはしないか。

医療的ケア児の増加はかけがえのない命を守れたゆえの現象。救命のその先の社会体制が追いついていないからと、その前の段階で数を減らそうというのであれば、あまりにも乱暴で傲慢な考え方だ。

ここの部分に意識が届かないのはなぜだろう。かけがえのない命。その先の支援にこそ、手を当てていかなくてはならない。

資料:

◇旧優生保護法

「不良な子孫の出生防止」を掲げて1948年施行。知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人の同意がなくても不妊手術を認めた。ハンセン病患者も同意に基づき手術された。53年の国の通知はやむをえない場合、身体拘束や麻酔薬の使用、騙した上での手術も容認。日弁連によると、96年の「母体保護法」への改定までに障害者らへの不妊手術は2万5000人に行われた。同様の法律により不妊手術が行われたスウェーデンやドイツでは、国が被害者に正式に謝罪・補償している。[東京新聞記事より抜粋]

◇母体保護法

旧「優生保護法」に 代るものとして,1996年に制定,公布された法律。母性の生命と健康を保護することを 目的とし,そのために一定の条件をそなえた場合には不妊手術または人工妊娠中絶を 認めたものである。[ブリタニカ国際大百科事典より抜粋]