子どもが大切にされる平和な社会へ

教材図鑑~SHJアーティストの気づき~

自分からは動けない

という運動能力の不在。

好き、嫌いという感情の不在。

やりたい、やりたくない、

これならできる、この素材は気持ち悪いといった意思の不在。

これらは困難さと生きる子どもたちと関わる立場が

絶対に持ってはいけない決めつけです。

教材図鑑を手にとってくれたSHJアーティストは

「感覚過敏」の存在を知り、

はっ!と思ったと話していました。

手のひらに絵の具を塗って手形を押す

ワークショップの時に

泣き叫ぶ子が1人いたことが印象に残っていたと。

手のひらの冷たくニチャッとした絵具の感触に

何が行われているか分からないまま

半ば強制的に手に絵の具を塗られ、

台紙に押し付けられる子達を前に

このワークは必要なことだったのか?

終了後もしばらく非常に落ち込んだ、と。

今回、教材図鑑を読み、知らなかったことに気づき

関わるものとして大いに反省しなければいけない点だ、とも。

しかし

実は

肢体不自由教育の現場でも

たびたびこのような風景を目にしていました。

自分自身にも身に覚えがあります。

とても苦い経験です。

冬休み明けの最初の総合の時間、

「書き初め会」を開いたときのことです。

担当が小学6年生の

インフルエンザ脳炎のために最重度の障がいを負ってしまった男の子、Tくんでした。

Tくんは常にストレッチャーに横になっていて

褥瘡予防のために数時間ごとに体位変換をします。

この時もストレッチャーに乗って院内学級にお母さんと一緒に登校しました。

伸ばせる方の(機能的に)腕を

ストレッチャーの柵の隙間から引っ張り出し

筆を無理やり⁉︎

握らせ!

筆を固定するために

包むようにして

Tくんの手を握り、半紙の上をすべらせました。

小学校1年生から高校生まで

病気も障がいもそれぞれ。

50分という短い時間に一斉に行われる

イベント!では

とにかくその子の作品を仕上げなくてはならないのです。

いや~な思いを抱きながら

なんとか1枚書き上げました。

でも作品はTくん自身のものではない!

私が無理やり動かした末出来上がったものに過ぎない。

書き初めやりました!という事実を残すため?

意味があるのかな・・・

という思いを内心に秘めたまま

身体だけ、とにかく動いていた

そんな中で

何を書いたのかも覚えていません。

かたわらのお母さんは何を思っていたでしょうか。

それぞれが自分の作品を見入ったり

見せ合ったりしながらの

賑やかな休み時間も

自分はそこにいるけどいない

実態のないような感覚のまま、

次の授業の準備に取り掛かりました。

何かとんでもなく悪いことをしてしまったような

ざらざらとした気持ちのままその日を終えました。

彼の人格を踏みにじるようなことをしてしまった

そんなことが普通に行われている教育現場

おかしいんじゃないか・・・

Tくん、本当にごめん。

その釈然としない思いと罪悪感が

在宅訪問学習支援事業をはじめたきっかけでした。

そして支援員の

「子どもから気づき、子どもから学ぶこと

工夫さえすればその子らしくその子の世界を広げることができる」

という障がいの子とのやり取りの中での指針を

日を追うごとに私も確信していくことになりました。

一人一人全く違う障がいに寄り添って個別に応えていく

そんなことが一斉授業ばかりの学校で

実現できるとは思えません。

あの日の経験はそんな現場の土壌を物語ります。

事務仕事も含めて子どもとふれあう時間が確保されない実態から

教員たちも工夫したいけど

どうしたらいいか研究する時間すらない。

そんな中で作られた

「バリアフリーみんなの教材図鑑」

その子の人格に寄り添った環境づくり

つまり教材の工夫が手に取るようにわかるのです。

多くの関係者の胸をときめかせたのはある意味自然なことです。

そして今回、

アーティストの気づきこそが私をはっ!とさせました。

障がいの重い子どもたちとの時間の過ごし方については

研修会や

SHJボランティアハンドブック「重症心身障がい児への支援」

~子どもたちの困難さに寄り添い、

やり取りを豊かにするヒント~

を通してアーティストも関わり手として学んできました。

教員や学生、支援員、発達センター職員、作業療法士、

言語聴覚士、ヘルパーなどに

活用いただいている図鑑ですが、

SHJのアーティストたちにも

ぜひ読んでもらいたい、と今回強く感じました。

いえ、誰が読んでも

生きるという意味で大きな示唆を与えてくれる書物です。

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