子どもが大切にされる平和な社会へ

〜医療ケア児と家族の現状〜

筑波大学病院 患者家族会の夏祭りに参加したのをきっかけに、SHJ茨城地区を立ち上げるとになり、その打ち合わせの席での出来事。

コーディネータ補佐を名乗り上げてくれたNさんはミーティングがはじまって20分が経過したころ、子どもが通う特別支援学校から緊急電話を受けました。

9/15の投稿の「医療ケア児にもっと目を向けて!」の中で、

特定行為(認定を受けた教員ができる学校での医療ケア)として、 口腔内の喀痰吸引 ・鼻腔内の喀痰吸引 ・気管 カニューレ内の喀痰 吸引、胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養、経鼻経管栄養を紹介し、それ以外は常駐の看護師が対応する場合と、多くは家族が対処する現状について書きました。

この日、まさにこの問題点を目の当たりにしました。

いつ呼び出されるかわからないことに備えて、子どもが学校にいる間はすぐに駆けつけられる行動範囲に居場所をとどめている。楽しみな息抜きの時間、友人とのランチもなるべく近くで、それでも呼び出しがあり退席することが多いといいます。

子どもが学校にいる間も心身ともに解放されることはない。まさに24時間体制のケア。

当然、母親の就労の機会も、社会参加の機会も極端に制限されているのです。

それでも当事者としての切実な思いから、就学前の医療ケア児のサポートを事業とする団体の代表として多忙な毎日を送っているというから、頭が下がります。

そんな中、SHJの活動に深く賛同して在宅訪問等のアシスタントを、時間の許す限り行っていきたい、と活動への参加にもとても意欲的です。

国はそんな母の強さや正義感に甘えていないでしょうか。

衆院選では各党、子育て支援策で競っていますが、待機児童問題も大事、並行して、女性の就労とその意欲に応えるというのがそのねらいであるならば、医療ケア児を安心して学びの場に送り出せるような社会のシステム作りも重要な課題です。

苦労と闘う家族の、子どもを守る母親の、社会を良くしていこうという意気込みには、当事者としての本気さが人一倍あります。

そんな「本気な母たち」の力を生かせるような社会、これこそが成熟した社会の始まりの姿なのではないでしょうか。

加えて、特別支援学校に通う子どもの医療ケアを必要とする割合は在学者数の約1割(在学者数85,987人に対し8,116人。平成28年度特別支援学校等の医療的ケアに関する調査結果について 文部科学省調べ より)と、決して少なくないしその課題の重要性たるや、見過ごすことはできません。

医療との融合を図れるような学校教育システムの構築、そして医療、福祉、教育の横の連携充実を求めて社会の再構築を切に望みます。

「仕方ないな。それじゃまた」

と笑顔で我が子の元へ急ぐNさんの背中を、彼女への尊敬と社会への怒りが混ぜこぜになった落ち着かない気持ちで見送りました。

参考資料: 平成28年度特別支援学校等の医療的ケアに関する調査結果について