先日テレビ番組で小学校の英語教育について議論していました。
会話中心か文法も取り入れるか、
業界では見解が二分されているようです。
方針も定まらないうちにスタートした小学校での英語授業。
現場では、担任の先生が教員免許取得時にはなかった科目の英語を、
いきなりネイティブのALT(アシスタントランゲージティーチャー)の先生との
授業の組み立てに苦労している、
というのが導入の頃の実情だったと思いますが、改善されたのかどうか、
この番組を見ていて、あまり進展はなさそうだという印象を受けました。
結論から言うと、聞く、話す、読む、書くの4技能のうち、小学校では読む書くより聞く話す方が大事とか、2つに分けるものではないと思っています。
学校で英語を習う前にすでに小さいうちから英会話スクールに通っている子どももいますが、まずはじめての「英語」というスタンスで授業は進められます。
英語に親しむためにまずは歌やゲームなどで英語の”音”やリズムに慣れる。
そして簡単な日常会話。
そもそも、日常会話というのがどこまでの範囲なのでしょうか。
・挨拶
・基本的な自己紹介
・Do you like ~ ? Do you play ~ ?でやりとりするパターン練習
など。
これらはパターンを覚えてしまえば十分身につけられるし、困らないかもしれないけれど、ただ行って返ってくるだけの会話になりがち。
いったん挨拶なり自己紹介してそのあと会話が続くのか、というところが
「日常会話くらいでいいんじゃない?」
という発想の落とし穴です。
挨拶する、自分のことを聞いてもらう、聞いて必要な情報を得る、これでは会話は続かないし、深まっていきません。
相手が話していることを何とか理解できるようになり、それに対して、文法が少々まちがっていても、誤解されないような応答ができるようになれば、「日常英会話ができる」と言えると思います。
そしてその後どうしたいか、というところでしょう。
伝えたいことがあるから言語がある。日本語だって同じです。
伝えたいことあれば何としてでも伝えようと努力する、わかってもらいたい!と。
会話の出発点と言える「伝えたいこと」があるなしで、語学の習得に大きな差が出ると思います。
そもそも、どこの言葉かは抜きにして、
小さな頃から、家庭や学校でたくさんの会話があって、自分の思いを尊重してもらえる環境があることはもちろん、ことあるごとに、
どう思う?
どうしたらいいと思う?
と互いに考える習慣や、
意見を言い合い、互いの思いを受け止め合う習慣があれば、
自分から相手に伝えよう、感想を発表しよう、話し合おうというコミュニケーションへの高いモチベーションが持てます。
そのベースがあってこそ、語学の習得、ここで言うところの英語習得につながるのではないでしょうか。
こういった子どもを取り巻く環境作りが、英語教育を語る前にするべき大切なことです。詰め込み教育の中で対話が少なくなっていくのでは本末転倒です。
そして伝えたいことをより正確に伝えるためにはやはり、文章の構造や言語の裏にある文化など、授業で話題にするといいと思っています。
何度か書いていますが、教員時代に生徒に伝えてきたこと。
英語と日本語、主語以外は単語の並びが真逆であること。
これは突き詰めれば言語そのものというより、考え方や思考回路の裏にある文化の違いにあること。
言語は目的ではなく、手段であること。
道具があっても何を作るか決まっていなければ役に立ちません。
何を作りたいかで、道具を揃える。それと同じで、
伝えたいことがうんと心の中にあってこそ、語学は身につき、どんどん上達すると思っています。
そもそものコミュニケーションへの意欲が根底にあることが大前提ということ。
その上で、会話を重視する、と言っても文章の構造がわからないと行き詰るわけで、聞く話すと読む書く、どちらが先かという議論が必要なくなります。
余談ですが、
文法が全く異なる言語を話そうとすると、単語は知っていても文章を頭の中で考えているうちに会話がどんどん進んでしまう、というのが大抵の悩み。
そこで必要なのが、考えているのでちょっと待ってね、というアピール。
そんな「間をつなぐ表現」を幾つか知っておくと、会話も続けやすくなります。
また別の機会にその例を紹介したいと思います。