つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

今に没頭するということ

「今」に没頭する時間が、子どもを、親を、病院を変えた

これは拙著「夢中になれる小児病棟」の帯に書かれたコピーです。

その下には

「病気や障がいがある子どもに、アートを届けるNPO。

孤独や未来への不安、治療の緊張のなかで、

『患者でない時間』が生み出したものとは?」

とあります。

「今」に没頭する、とはどんなことでしょうか。

「患者でない時間」とは?

立場を行き来しながら生きる

私たちは常日頃、

表の世界(社会的な立場)と

内面の世界を行き来しながら生活しています。

勤務時間、通勤時間などはわかりやすい例でしょうか。

一旦拘束時間を解かれたら、自分の時間、自由な時間です。

患者という立場

入院して患者になる、というのは社会的な立場をさします。

病棟ではその立場に従って行動し

医療者の指示に従い、病気を治すことに専念します。

痛くたって苦しくたって

必要だと決められた処置を受けます。

否応無しに

今やらなくてはならない事がめじろおしに待ち構えています。

そして、それが長く続き、

表の世界と内面を行き来することが困難となります。

社会的な立場から離れた自分という

個人の立場はどこにあるでしょうか。

退院して自由になったら~~

と一旦は自分という一個の個人を生きることを

棚上げするというイメージでしょうか。

外出もままならず

好きなものを食べることもお預け。

そんななか、

「患者でない時間」が持てるとしたら・・

患者でない時間

患者にとっての「患者でない時間」・・・

それを叶えるのがアートではないかと考えています。

身体は束縛されていても

こころだけは自由に「今」に没頭できるのがアートと向き合う時です。

アートを媒介に「患者でない時間」が生まれ

患者ではない、世界に一人しかいない「自分」が復活します。

病棟での一コマです。

フルートを習っていたけれど長期入院することになった少年がいました。

フルートは枕元に飾るだけにして

患者として毎日生活する中

アーティストとセッションをすることになりました。

患者としての立場を決め込むしかなかった自分を解放して思いっきり演奏。

演奏後の満足げな彼の顔は忘れられません。

それもそのはず

病棟中に感動を巻き起こしたのですから。

ナースステーションはスタンディングオベーション!水泳 英会話 ピアノ サッカー お絵描き ・・・ 長期の入院を宣告されたら、大好きだったお稽古をいったん辞めることになります...

このほか、絵画やものづくり、音楽、大道芸など

アート活動が定期的に続くと

病棟も明るくなり、

明らかに闘病する子どもたちが輝き

治療に前向きになった、と話してくれた医師もいました。

社会と自分を行き来しながら生きる上において

アートを通して「今」に没頭することが

その潤滑油のような役割を果たしていて

さらに相乗効果を生んでいるように思えます。

生きること 「今」に没頭すること

生きていくということは

様々な困難に対峙していくということ。

山あり谷ありの毎日に翻弄され疲れてしまわないように、

アートがそっと手を差し伸べてくれるかのようです。

何かを通して「今」に没頭する、ということは

主体的に物事に夢中になるということ。

精神が豊かに成長する至高の時間なのではないかと。

それは立場を超え、何と向き合っている時でも言える普遍性のあることのように思います。

そんな中でも、特にアートには目には見えない大きな力が備わっていると思っています。

それを教えてくれたのがまさに

病気と闘っている子どもたちが見せてくれた

アートを通して没頭することにより起きた彼らの変化です。

アートで人は元気になれる

アートが好き、アートで人は元気になれると共感してくださる方、

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