つれづれにっき〜スマイリングな日々〜

狭い病室で出会った壮大な西洋の歴史

ルネサンスとはなんであったのか

怪我をして動けないなか、

ひょんなことからこの本を手に取る機会に恵まれ

夢中で読んだ。

塩野七生著「ルネサンスとは何であったのか」(平成13年4月 新潮社)。

塩野氏の作品では「コンスタンチノープルの陥落」

を読んだことがある。

1453年の東ローマ帝国の滅亡

(コンスタンチノープルは東ローマ帝国の首都、現在のイスタンブール)

は長きにわたるルネサンス真っ最中の一つの出来事であるが

今回この本を読むことで

ルネサンスそのものを遠くから俯瞰するような

壮大な西洋の歴史に身をおいた気分になった。

とは言ってももちろん、全ての理解には程遠いが・・・

見たい、知りたい、わかりたい!

ルネサンス・・・

個人的なイメージとしては

十字軍の勢いに乗った文化の繁栄。

それからフレスコ画や宗教画などに見られる

キリスト教普及のためのきらびやかな美術の隆盛。

しかし、それは単なる私個人の稚拙な理解で

ルネサンスとは、

見たい、知りたい、わかりたい!

そんな人々の熱意の爆発が

創造へのエネルギーとなり

数々の傑作が生まれ

造形美術を中心に学問や科学という各分野に波及していった

精神運動の時代のこと、

時代というかその現象自体のことなのだ。

ルネサンススピリット

ところで、

場所はフィレンツェ、ローマ、ヴェネチア・・・

見たい、知りたい、わかりたい!」という欲望の爆発が

なぜ起こり当時の人々に広まったか・・

それは「信じるものは幸い」であり、

「信じる者のみが天国に行ける」という

キリスト教の教えに長い間押さえられていたからだと本書にある。

押さえに押さえられたら、次に起きるのは反発。

なるほど、既成概念への疑問と抵抗、それが

強烈な批判精神につながり、

「表現」への欲望や好奇心を生んだ。

ルネサンススピリットとはそういうことだ。

表現する、ということ

レオナルド・ダ・ビンチが

多数のスケッチや想いを書き残したことに対して

著者が綴ったくだりが印象に残っているので引用する。

「ペンであろうが、画筆であろうが、

それらを使っての表現とは、他者に対してだけでなく

自分自身に向かって語ることでもある。

文章や絵画にすることによって

考えるよりもより明快になるのだから。

表現には伝達の手段としての役割だけでなく、

頭の中にある考えをはっきりとさせる役割もある

いっぽう、

「表現とは自己満足ではない。

他者に伝えたいという強烈な思いが内包されているからこそ

力強い作品に結晶できる

とも書いている。

あるアーティストがこう言ったことがあった。

「絵ばかり描いていて何の役に立っているのか。

自己満足で終わっているんじゃないか」と。

絵を漫然と描き続けることは難しいだろう。むしろ

表現」したい、他者に伝えたいからこそ、絵を描き続けられるのだ、

とすぐにでも彼女に会いに言って伝えたくなった。

人間性の解放

子どもたちに芸術を届ける活動をしながら

ルネサンスとは何ぞやを今頃知るとは・・・m(_ _)m

見たい、知りたい、わかりたい!

そう思って人間性を解放したルネサンスの人々。

明日とか希望とかの象徴でもあるおさな子に重なる。

ルネサンスの芸術家たちは

まるで幼い子どものような自由闊達さで

自分を「表現」し

時代を切り拓いていったのかもしれない。

そして、まるで病棟でのアート活動中に

病いから自分を解放し

身体いっぱい「表現」する子どもたちのように

*****

抑圧から反発し「表現の自由」を謳歌したルネサンス時代。

かたや「表現の自由」の捉え方に危うさ漂う日本の今。

少なくともルネサンス期の描写のどこを探しても

「表現の自由」を謳い人を傷つけた記録はどこにもない。

批判的精神こそ

そのような時代を経て今がある。

居ながらにして得られる情報、

自然に入ってくる溢れるほどの情報の中で、

代々と当たり前に語り継がれたキリストの教えに

疑問を呈して反発したルネサンスの人々のように、

真実かを疑ってみる・・・

何が真実なのかを追究していく・・・

そのような探究心や批判的精神が

現代の私たちにこそ必要なのかもしれない、

と思う。

読み進めながらその想いにとらわれたのは

まさに今という情報化社会に危機感を感じているからかもしれない。

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