当時を思い出しながら楽しみに
今から15年ほど前に
T病院の院内学級で知り合った女の子Sちゃんが
事務所に遊びにきてくれることになり
それが目下一番の楽しみとなっています。
ワクワクするほど。
あれからもう15年経つということは彼女はもう25歳。
時の流れの速さを思います。
当時私は中学部高等部で英語授業を担当し、
担任は毎年変わって
小学5年だったり中学２年だったり高校2年だったり。
彼女は小学２〜３年生（と記憶している）だったから
授業を共にすることもなく
行事があっても深く関わる、
ということはありませんでした。
少なくとも学校の活動、つまり教育課程上は
なんの接点もなかったと言えます。
しかし、彼女のことは強烈に印象に残っています。
Sちゃんと私
脳腫瘍を発症して長期入院していたにも関わらず
病気をはねのけるかのようにとても活発な子で、
小学部の女の子たちにとって中心的な存在だと遠目からでも
わかるほどだったから。
さて、私はといえば放課後は病棟に身を置きながら
担当外の学年の子どもと関わることも多く
その時間は授業から解放された子どもたち同様、
私にとっても、待ってました！、のひと時でした。
中学高等部女子の４人部屋へ行っては
おしゃべりに花を咲かせたり
手芸など物作りに夢中になったりという中
同室だったSちゃんも参加してくれることがあり、
その人懐っこさに引き込まれたのもはっきりと覚えています。
お姉さんたちにもとても可愛がられていた記憶も。
「何してるの？」
と輪に加わってきたとき
私が
「Sちゃんも一緒にやらない？」
などと答えるより先に
お姉さんたちが隙間を作って椅子を置き、
「ここに座って！今ね、〇〇を作ってるんだけどやってみる？」
などとやり取りが始まったものです。
偶然の時間の共有は奇跡
小学生、中学生、高校生という異年齢が一緒になり
いっそう賑やかになるその様子をみては
入院という出来事が同時に降りかかり
たまたまそこで出会った子どもたちが
このように交流していることに
縁や出会いの素晴らしさを感じたものです。
それぞれが長きに渡る治療を要する病と闘うなかでの
偶然の時間の共有が奇跡のようで
何かこの上ないいのちの場が生み出されている感覚でした。
Sちゃんのこと
そんなSちゃんが、事務所に遊びにきてくれるというのです。
私のFacebookの投稿をいつもフォローしてくれているのがきっかけ。
私が他の院内学級に異動後しばらくして手術を受けたSちゃん。
脳の腫瘍を取る時に視神経をどうしても傷つけることが避けられず
視力を完全に失ってしまいました。
その後、
中学受験をして通っていた盲学校の運動会や文化祭に呼んでくれましたが
持ち前の活発さと人懐こさはまったくもって健在でした。
それからは会うことがなくなり
かれこれ10年が経つというのに時の隔たりを感じません。
「もう”Sちゃん”じゃね、Sさんと呼ばなきゃ」
という私に
「いいえ、Sちゃんと呼んでください」
と、やっぱり今でも人懐っこい。
私に勇気をくれるもの
二人きりで共有した時間は全くないのに
こうして大人になったSちゃんが事務所を訪ねてくれ語り合う時間は
どんなものだろう。
私にとっては
流れた月日はその場から消え去るに違いないけれど
Sちゃんにとっては
すっかり老け込んだ私をみて
流れた月日の長さを実感するでしょうか。
そんなことより、
その間の彼女の生き方や思いを聞かせてもらうことを思うと
魂が震えます。
命と向き合いながら生きた経験を持つ人との交わりほど
私に勇気をくれるものはありません。
私を成長させてくれたたくさんの子どもたちへの感謝の気持ちが蘇ります。
今はひたすら、Sさんへの敬い、
そして不思議な緊張感を胸に
再開の日を楽しみにする毎日です。
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