違った角度から眺めてみると
~世界の見方を変える方法~
と副題のついたこの本、
まず、書名に惹かれて手にとった。
「まなざしのデザイン」(ハナムラチカヒロ著 NTT出版)
ハナムラチカヒロ|ランドスケープアーティストー文化自由都市ー
当たり前の世界を改めて見直し
今見ている風景を違った角度から眺めてみよう、
見方が自由になればより創造的になれるから。
というこの本のコンセプトは
前回綴った、
田中達也氏が手がける見立てアートのそれに似ている。
あるものを物理的に違った角度から
そして野菜、道具などといったカテゴリーまでも乗り越え
眺めてみることで
思わぬ発想や目から鱗の気づきが生まれる。
例えば、
ポテトチップスを大皿の上に盛ってみる。
そこに鍬を持ったミニチュアの農夫を置いてみる。
そこに広がるのは広大な畑だ。
氏はこれを「北海道の雄大なポテ地」と命名している。
まなざしのデザインとは
そんな遊びごころを大いにくすぐる考え方でもある。
「病院」の見方を変えてみる
では病院の見方を変える方法はないだろうか、
と私なりに考えてみた。
病院の固定観念を捨て改めて見直し
病院を違った角度から眺めてみるのだ。
見方が自由になればより創造的な!病院が生まれるかもしれない。
場に存在するコミュニケーションの下敷き
人間は往々にして場の状態を読んで振る舞いを変えている。
場は人々の心を誘導し
コミュニケーションの下敷きを作る。
それが自由な発想を阻んで
定型化してしまうこともありそうだ。
場がコミュニケーションの下敷きを作る・・・
それを代表する場の一つが病院、
特に患者が生活する病棟だと思う。
院内学級の教師として、
また医療とアートをつなげる団体を設立した者として、
場と人々の意識がより閉塞した場所は
他でもない病院だと気づき、
「だから変えるのだ」、
と奮闘する中で身に染みて感じていることだ。
場に存在する暗黙の指令
患者、医者を含め、多種多様な不特定多数の人が同じ空間で活動し、
その中で立場ごとにどう振る舞うべきかという
場の暗黙の指令?とでも言えそうな縛りが
病院には確実に存在する。
立場の違いや役割がくっきりしていて、
それぞれが自分の役割を忠実に演じる場所。
自分自身を横に置いて・・・。
おまけに立場の間に高い垣根が存在する。
コミュニケーションは固定化し、
当たり障りのない対話に終始する。
もちろん、病院とは病気を治す、という大きな目的を真ん中に
存在する場所だから
治す、ということのために一点集中すべきで
直接関わりのないことは不要なものとされがちだ。
だから場の持つ圧力のようなものがあって当然?
コミュニケーションも必要なことだけ?
病院の固定観念を破る
いいえ、
病院の固定観念を破って
病院をもっと明るい世界にできたら、
と改めて思うのである。
小児病棟にアートを持ち込むことで
作品や音楽や文学や曲芸や・・・
さまざまな素材を通した、
または医療と関係ないことに夢中になることで生まれた空気の中で、
感動や共感が素直で豊かなコミュニケーションを生む様子を
何度となくみてきたから
それは可能だとわかる。
「当たり前」という殻を破って
私たちは
今見ているものや物事を
ある枠組みに当てはめたりカテゴリーに仕分けして考えたり
角度を固定してから議論したりする。
しかし、氏が言うように
既存の価値を疑い解体するもの、
個々の課題を社会に向かって表現するものがアートならば、
日常の当たり前から
非日常の当たり前でない場に強制的に連れてこられ
閉塞空間で生活する患者が
アートを通して
当たり前の枠組みにおける「ものの見方」から解放され
当たり前の価値を解体して
自由な発想で感性を爆発させられるんじゃないか。
病院を、闘病のための苦痛の場ではなく
「目の前のことや物を一つの範疇で囲って考える日常から離れた世界」、
と捉え直すことができたら
そしてそこに自由な表現活動が保障されれば
それは人々が見方を変えるほどの
社会に向けた強烈なメッセージになりうる。
*****
私なりに病院の見方を変えると
このような世界が広がってくる。
表現活動を病院の日常に潤沢に取り入れることで
患者が場に設定された当たり前の殻を破って
本当の自分に出会える場所になり得ると。
アートで人は元気になれる
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