〜生活・アート・子ども〜

我が家のリビングを飾る油絵の作家、野沢二郎氏の個展へ。

水や風をテーマにした抽象画は空気のようでもあり、逆に生活の中のエッセンスでもあり。

孫たちにとっても、幼い頃から生活の場にアートがあること、そしてそれを大切にするばあばの暮らしが、少しばかり感性を磨く糧になればいいな、とも思っています。

水面に映る多彩な情景をダイナミックに描く野沢氏。水面には常にきらきらと変化する表情があり、光と色の移ろいを見ることができる、と語っていたことが印象的です。

銀座のコバヤシ画廊で個展を開催されるたび、欠かさず見に行っていますが、野沢氏の活動はとても幅広く、2012年、千葉県佐倉市にある川村記念美術館で開催された展覧会「抽象と形態:何処までも顕れないもの」で、モネの「睡蓮」(1907年)と並べられて野沢氏の「Water Surface/薄日」(2009年)が展示されたのは、まさに彼の才能の証です。

友人に誘われて行った個展でただただ気に入って絵の前から動けなくなるほどの衝撃の末、購入を決めたのがその数年前。自分の審美眼もまんざらではないな、とぞくぞくしたのを覚えています。

野沢氏の子どもアートワークショップの見本(右)。ペンギンの腹にSmiling Hospita Japanと粋なはからい。左は一緒に送ってもらったキットで作成したもの。

コバヤシ画廊では、野沢さんはもちろん、他にも個性的な作家と出会います。

今回の出会いは、造形作家の 西成田洋子氏。古着やバッグ、靴など身の回りの廃品を素材にユニークな表現をしていて、先週、コバヤシ画廊で個展を開催されました。

作品の話から子育ての話にまで発展。

子どもは大人より遥かに感性が豊かでごまかしはきかない。子どもだからこんなもんでいいだろう、は大人にとってとんだ落とし穴だと。

同感、同感。子どもの素晴らしさを語るうち、アートと子どもをテーマにしばし話し込みました。

■野沢二郎個展 Blowin’ Within  Gallery Kobayashiにて開催中 11/25まで 

野沢二郎 | artists | GALLERY KOBAYASHI | コバヤシ画廊

Gallery Kobayashi 

西成田洋子 Facebook

〜アシスタント研修@似顔絵の会@日赤〜

SHJ新アシスタントの研修のため日赤医療センターでの活動に参加しました。

日赤では活動回数が多いため、アシスタントが複数必要です。

ボランティアは常時募集していて、月に1度、東京ボランティア市民活動センターにて説明会を行っています。

応募してくれたのは保育士の奈良百恵さん。

笑顔で研修中!
プレイルームで、個室で、それぞれの場所で注意することや工夫を。これは真剣!

私とは親子ほども離れているけど、保育士ということもあり、子どもへの寄り添い方は確かなもの。

ついつい孫の成長についてまで、気がかりを相談。初めての現場なのに、頼りになる方だとすぐにわかりました。

活動は絵本挿絵家 水野ぷりんさんの「似顔絵クロッキー」

ぷりんさんの報告書から・・

似顔絵もモデルなんて初めての子供たち。初めは恥ずかしがっているお子様も多かったのですが出来上がると、気に入ってくれた様子、にこにこしてくれて嬉しかったです。「ボランティアってありがたいですね」とおっしゃってくれたお母様もおいででした。なかなかお顔を見せてくれない男の子の時にスマホで写真を見せてくれたお母様。助かりました。付き添ってくださった岩井さんが、とてもおしゃべりがお上手。子供たちの気持ちをほぐしてくださるので、私は、絵に集中できました。有難うございます。

どこの病院でも「入院中に似顔絵を描いてプレゼントしてくれるなんて!」と喜ばれているぷりんさん。

優しい優しい笑顔で話しかけながら観察して特徴を掴み、最初のタッチからみるみる仕上がり表情までもそっくりに。

「そっくりに描いてくれる」のも嬉しいけど、仕上がっていく過程を見ているのもウキウキ。仕上がる程に、子どもの表情がやわらくなります。最初からきゃっきゃとはしゃぐ赤ちゃんも。

柔らかい作風に癒され穏やかな気持ちに。皆さん、決まったようにベッドサイドに飾ってくださいます。

日赤アシスタントの岩井眞知子さんからは、活動で一緒になるたび、子どもや親御さんへの寄り添い方について多くを学んでいます。

患者さんへのみならず、アーティストへの労いも忘れません。活動が終わるとジップロックにおやつを詰めて「はい、お疲れ様」。

アシスタントの力。

最初は怪訝な顔をしている子どもたちが笑顔になる変容は、アーティストだけでなく、アシスタントの力もとても大きいものです。

これはどこのアシスタントも同じ。穏やかさと相手の立場を慮る洞察力を誰もが持っている。

それもSHJの自慢のひとつです。

水野ぷりん絵本Work

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~学びの秋~

学園祭の秋。

都立特別支援学校の学習発表会に行きました。

毎年見学していますが、SHJを始めてから重心の子どもたちへの関わり方に団体としての課題が高まっているせいか、

子どもの実態に則した教員の動きが自然と見学のポイントになりました。

印象に残ったのが、

「方法を工夫さえすれば全ての人が学びを深め、自分の世界を広げていける」

という理念を教員同士が共有しながら困難さに寄り添う関わりを徹底しているグループの発表です。

このグループは最重度と言われる重症心身障がいの高校生のクラスです。

生徒自ら学べる環境を作るため、教員は本人とやりとりしながら一人ひとりをよく観察します。そして身体のどの場所が意図的に動かせるのかを見極めます。

その自発的な動きで最大限意思を表出できるよう、音声出力補助装置VOCA*や、一つのスイッチのオンオフでパソコンを操作できるよう工夫した支援機器、

働きかけながら目と手の協応を引き出す教材教具、

そして始点と終点がはっきりしていて自分の手の動きに対して明確なフィードバックがある教材

を作成し使用している日頃の授業の様子を発表していました。

とかく見た目で「わからないだろう」と思われがちの重心の方たち。

正直なところ、SHJの活動でも、アーティストたちは、

「見えているのかな」

「聞こえているのかな」

「言葉を理解しているのかな」

・・・・・・

とわからないことだらけでした。

院内学級にいた私も、特別支援学校の教員でありながら教科指導をしていたこともあり、重症心身障がいの子どもたちとの関わり方にいつも戸惑っていました。

特別支援学校教員免許を取った時に勉強したはずなのに、その内容は何一つ活かせない。

目の前の子どもの力を引き出せない非力さ・・申し訳ない気持ちを教員を辞めるまで引きずりました。

ところがこのグループの実践は環境さえ整えばできないことは何もない、という考え方のもと、生徒たちに寄り添います。

そうだったのか。これまでの自分の無能さにハンマーで頭を叩かれたくらいの衝撃と、安堵が。

今年の3月のSHJ全国研修・交流会にて講演を依頼したのが、この方法を実践している特別支援学校の教員でした。

その内容が、ベッドサイドでの活動に活かせる!と、反響が多かったことから冊子にまとめました。

今ではSHJのアーティスト、アシスタントが、活動場所までの道中ヒントを再確認している、ハンディでいつでも手にとれて便利、と活用しています。

重症心身障がい児者と関わる現場や普段の生活の中で触れ合う機会に大変役立つヒント満載で、全国から送って欲しいという依頼が続いています。

ご希望、お問い合わせは事務局まで。

毎年、とても勉強になる学習発表会。

学びの秋。生徒たちの学びへの意欲が爽やかな気持ちにさせてくれます。

来年も楽しみです。

VOCA = Voice Output Communication Aid 「音声を出力するコミュニケーション機器」ビッグマックなど声を録音してスイッチで再生できる機械や、トーキングエイドなど発話機能がある機器を指す。

Smiling Hospital Japan 事務局アドレス info@smilinghpj.org

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~優劣のかなたで学びひたる~

 

大村はまさんをご存知だろうか。

中等国語教育の実践・研究者(1906~2005)として、書くことを通して学習者の考える力・自分で学習する力の育成をはかってきた国語教師。

戦後は机も椅子も、教科書も黒板もない教室で、新聞・雑誌をせっせと切り抜き、学習材料にしたそうだ。

私は大村さんの著書「灯し続けることば」を読むと、ふとまた教員に戻りたい、と思ったりします。

この中でとても印象に残ったくだりを抜粋して紹介します。

「伸びようという気持ちを持たない人は、子どもとは無縁の人です」

子どもは、高いものにあこがれ、自分をそこまで成長させよう、前進させようとひたむきに願っています。身の程を忘れてと言いたいほど、伸びよう、伸びたいと思っています。その切ないほど伸びたい気持ちと、研究や研修を通してこそ、私たちは共感していけるのです。学ぶことの苦しみ、そして少しの喜びを、子どもと同じように感じられるのです。そういう魂を持っていれば、世代を超えていつまでも子どもと共にある、と言えるのではないでしょうか。

「種を蒔くほうが大切です」

子どもはほめることが大切です。でも、いいことがあったらほめようというのではなく、ほめることが出てくるように、ほめる種をまいていくことを考えたいと思います。

「子どもほど、マンネリが嫌いな人はありません」

子どもは新鮮さに感動します。私自身が、新しいものへの小さな不安と期待を持ちつつ、子どもに向けてその教材を提供している、それが子どもを動かすのです。

「優劣のかなたで、学びひたる体験をさせたいのです」

誰より優れているとか劣っているとか考えるのは、一種のゆるみです。そんな優劣を超えた、いわば優劣のかなたで自分の学習にひたることが大切なのです。優劣など頭に浮かぶひまのない世界にまで、教師は子どもを連れて行かなくてはいけないのだと思います。

「年が小さいから、教え子として、ここに座っているにすぎません」

この子たちは自分をはるかに乗り越えて、未来の国をつくってくれる人なんだ、そういう敬意をもって、子どもという宝物に接していかなくてはならないと思います。

「教師は渡し守のようなものでしょう」

子どもが卒業していったら、私のことは全部忘れて、新しい学校、新しい友達に慣れて、新しい自分の世界を開いていってほしいと思います。教師は渡し守のようなものだから、向こう岸へ渡した子どもたちにはさっさと歩いていってほしいのです。「どうぞ新しい世界で、新しい友人と、新しい先生について、自分の道を開拓していって」と思いつつ、子どもを見送っています。

                  大村はま著「灯し続けることば」より抜粋

「教師は渡し守」のくだりは、私にちょっぴり反省を促します。

どうしても退院して元の学校に戻った子、卒業していった子のその後が心配になったものです。

転出していった子が外来のたびに職員室に遊びに来て慕ってくれるのが嬉しかったものです。

今どうしてるとか、将来は○○しようと考えてるとか話してくれるのが楽しくて。

渡し守、確かにその通りだ、と120%納得するけれど、やっぱりこれだけは私には無理だな、と思ったりもします。

教職を離れた今も大村はまさんの考え方はいろいろな場面で指針となっています。

〜アーティストコメント紹介!〜

活動のたびに報告書をアーティストとアシスタントに書いてもらい、記録、振り返り、次への動機づけとしています。

徳島はっちーさんの報告書から一部抜粋します。アーティスト自身が自分の活動を通してどんな成果があり何を学んだかを、心を込めて綴ってくださり、SHJの意義を改めて感じることのできるコメントです。

ショーの前の念入りな準備。病棟では学習室がSHJの控え室に早変わり!

プレイルームでのショーの時間。初めは目を合わせてくれなかった子、泣きそうだった子、怖いと言っていた子たちが、パフォーマンスを始めると自分から手を伸ばして近付いてくれたり話しかけてくれるようになったりするのは、いつものことながら嬉しいです。

病室では、これから処置室に入るという目に涙を浮かべた男の子のご家族から「風船で剣を」とのご要望がありプレゼント。男の子は涙目ながら好きな色は「青」と答えてくれました。作りながら話しかけ、風船でいたずらし、コミュニケーションを図りつつ風船の剣を作り上げると男の子の顔に笑顔が。ショーの時と同様にささやかでもこういう気持ちの変化を引き出せると、とても嬉しいです。

病室では他に人見知りの女の子や人懐っこい女の子とも出逢いました。人見知りの子はずっと壁のほうに体を向けたままチラチラこちらを横目に見るばかりで最後まで体は向けてくれませんでしたが、ピンクが好きとのことでピンクのお花やハートの風船をプレゼントし、しつこく話しかけ続けると(笑)少~しだけ表情がゆるみました。その地味な変化の嬉しいこと(笑)。

一方の人懐っこい子は初めから笑顔で、僕のことを「可愛い」と言ってくれたりとウェルカム態勢でしたが、コミュニケーションを取っていると更に打ち解けた姿を見せてくれました。

そして、僕たちのようなパフォーマーもそれは同じで、パフォーマンスでの変化は一時のことかも知れませんけども、その明るい変化が新しいことに繋がったり、積み重なって心の持ち方が明るくなったり、長い目で見て子どもたちの良い何かを引き出す一助に…なれば良いなと。

でも、そういう難しいことを抜きに、ただ子どもたちと芸を介して遊ぶということが凄く楽しくて、それで充分かと思ったりもするんですけど(笑)。とにかく病棟で子どもたちと遊ぶことが毎回楽しいんです。

気が付くとスマイリング・ホスピタルの帰りは、いつも清々しい気持ちになっていて逆に子どもたちからエネルギーを貰っています。

今回は普段とは少し違う表現を自分の中から引き出すことに繋がったので、面白く、嬉しかったです。子どもたちのお蔭でまた自分の可能性が広がった気がします!

素敵な機会を与えて下さる病院関係者の皆さん、子どもたち、親御さん方、アシスタントの方々に毎度ながら感謝です。

アーテイストが喜びを感じながら活動してくれることへの感謝と共感し合える感動・・それを揺るぎないものにしてくれるのが子どもたちの笑顔。SHJを創った喜びに心が震えます。

ところで・・涙を浮かべていた男の子は、青い剣をしっかり握って処置室へ。涙も乾いていたようです。

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