〜支援機器講習会でわかったこと〜

〜学びサポート通信「支援機器講習会2」〜

障がいが重いと、とかく見た目の重度さから、いろいろなことがわからないだろう、と判断されてしまいます。

しかし、まず機器や環境を工夫することでその人がわかっていることがわかると、回りの人の対応も変わってきます。

例えば提示。見えにくさに対して工夫することで、本人が見えるていることがわかれば、回りの人もそうやってみせようとします。

多くの肢体不自由がある方は、以下のような工夫をすればぐっと見えやすくなります。

🌀背景の整理・・・見えにくい方の場合、目の前が常に「ウォーリーを探せ」 のような状態であることを理解し、対象を探すために背景をシンプルにします。

🌀白黒反転 コントラスト・・・白地に黒文字が一般的ですが、白は眩しい色のため、文字も沈んで見えにくいのです。これを反転させれば見やすくなります。

🌀カーテンをしめる・・・逆光の場合は子どもによっては全く何も見えません。光源が見せたいものの後ろに来ることのない様にします。

🌀間接照明・・・特にストレチャーで活動する場合、常に天井を向いている状態です。眩しくないように不燃性の和紙で照明を覆う工夫もできます。

🌀色の濃い茶碗・・・白い茶碗に盛られたご飯は見えにくさの代表。コントラストのはっきりした茶碗なら残さずご飯を食べることができます。

こんなことが当たり前に行われていれば、他の人もかかわり方を最大限に工夫するようになるのです。

時には固定観念をリセットすることも大切かもしれません。

本人の不安を軽減するために、

だれ

どこ

なに

の手がかりも示すこともとても有効です。

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

何もわからないだろう・・

何もできないだろう・・

そんな風に思われること、想像してみてください。

我が子がそんな風に思われていること、お母さんの立場に立ってみてください。

わかってもらえたことの喜びはどんなでしょうか。

さあ、さっそく身近な方のところへ行って教えてもらいましょう。

どこに困っていますか?

こんな風にすれば動きやすいですか?見やすいですか?

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視線入力装置と映像楽器+SHJアーティスト=ジャズセッション!

学びサポート通信「東京都Aさんのお宅で音楽の授業」〜

スマイリングホスピタルジャパンは、小児病棟や施設を訪問してアート活動を行っていますが、医療的ケアを受けながら在宅生活を送る重度の障害がある方に、さまざまな支援機器を使って学びの時間を提供する事業も行っています。

やりとりを通してコミュニケーションを深めながら一緒に学習しています。

子どもに学びたいことを教えてもらい、そのためにどんな支援が必要かを互いに探り、よりよい環境を設定します。

筋ジストロフィで右手の人差し指のみでパソコンを駆使するAさんは、プログラミングの授業と音楽の授業を受けています。

パソコンで調べものをするのが趣味というAさん、パソコンでの作曲にも挑戦しているほど活動的な方です。

今日は音楽の日。

ボランティア学習支援員とSHJアーティストのシンガーソングライターによる授業です。

SHJアーティスト・シンガーソングライターの石橋和子さん

映像楽器と視線入力装置を使って音楽セッションを練習しました。

指先の動きではどうしても音楽に合わせたテンポとずれてしまうため、より意にかなう速度で入力できるように、視線で反応する装置を使います。

持ち込んだ支援機器は、

🌀視線入力装置Tobii Eye Tracker 4C

🌀液晶モニター

🌀パソッテル(モニター固定脚)

そして映像楽器は、

🌀「サウノスヴァルカ」

「サウノスヴァルカ」は、簡単な操作で和音やアルペジオを自由に弾くことができる映像楽器。

画面に、音にシンクロして抽象的なグラフィックが表示され、音と映像を同時に即興演奏することができる楽器です。「サウノスヴァルカ”Sounos Valka」

「サウノスヴァルカ」の一画面

まずはパソッテルで、液晶モニターをAさんの側臥状態に合わせた角度と距離に設定し、視線が反応するかチェック。

左上に見えるのが、パソッテルで液晶モニターを角度約90度に固定したところ。側臥のAさんが見やすい角度に微調整できます。

「サウノスヴァルカ」をいろいろ試してもらった後、コードの出力と音の長さ調整の練習をします。

まずAさんが、視線を持って行きやすいコードで始まる曲をアーティストがセレクト。

Aさんがジャズやクラシックなどに造詣が深いことを知っているアーティストが、

Amコードを受けて歌い始めたのは迫力あるブルース

“Summertime”。

3つのコード

Am

Dm

E7

を使って、視線の移動とそのタイミングを合わせる練習を数回行い、

見事セッションを成功させました。

録音しておいた2人の作品は何度聴いてもしびれます。

選んだ和音を、時には1章節分伸ばしたり、時には8分音符にして4度ジャジャジャジャーンと鳴らしてみたり。微妙にコードをずらしてアレンジしてみたり・・。

ジャズブルースは、速度も歌詞の乗せ方もアーティストのフィーリングによるアドリブで行い、それがまた絶妙な音楽性を生みだします。

このメカニズムが、支援機器を使ってセッションするときにぴったりとマッチするのです。

Aさんの選ぶコードとアーティストのボーカルが見事なハーモニーを生んで、オリジナルの作品となりました。

視線で画面を追うのはかなり疲れるはず。しかし、

少し休む?

という声かけに

大丈夫。

じゃ、もう一曲。

と、こちらもつい欲が出ます。

Aさんも慣れてきて、

選ぶコードも増えました。

それなら!

と、石橋さん。

C

Am

F

G

の4つのコードなら、これがぴったり!と、

“Stand By Me”

をセレクト。

お母さんもスタッフもシェーカーで参加。

クライマックスを受けてここで授業終了。

のはずが、

GarageBandも試したりしてつい最後まで熱が入りました。

今後Aさんは、これまでの指先でのパソコン操作に加え、視線入力による操作を使い、組み合わせることで、汎用性、速度そして体力面でも自由度が増すでしょう。それにより、自分の世界をより広げることができればと願っています。

調べることが好きなAさん、知りたいことにさらにリーチし、挑戦することも増えて行くはずです。

テクノロジーは、ほかならぬ、不自由を抱える人が自分の世界を広げるために進歩しているのだと、常々思っています。それが第一の目的でなければならないと。

身体が思うように動かない人にとって、視線を動かすだけで意を叶えられる・・・素晴らしいことです。

私たちが考える支援とは、健常者を手本に、健常者に追いつけ、というのではなく、その人ならではの、その人らしさを大切にした世界の広げ方を一緒に追い求めていくことです。

SHJは、支援方法を個別的に探り、ITや「その子の状態に合わせた」手作りの学習キットを使って、一人一人の思いを叶えられるよう、「学びサポート」に取り組んでいきます。

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