保育園に医療的ケア児クラス!

医療的ケア(以下医ケア)が必要な19歳以下は全国に約18000人いると言われます(厚生労働省2016年調べ)。

医療的ケア児とは・・・医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、 たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児のこと(厚生労働省「医療的ケアが必要な障害児への 支援の充実に向けて 平成29年10月発行」より)。 

医ケアを要する未就学の子どもにとって、週に一度ほど通所できる施設はあっても、主な居場所は自宅で、活動範囲も極端に限られているのが現状です。

そんな中、画期的な取り組みを新聞記事で知りました。

2020年に開設する港区の保育園が医療的ケア児のための専用クラスも設けると。

医ケア児のクラスを設けるのは、公立の保育園では全国でもこの園が初めての取り組みと聞きます。

医ケア対応のために、点滴などのチューブをかけられるよう天井にレールが取り付けら、吸引器やその他医療機器用にコンセントが多く設置されます。

送迎用の駐車場を複数設けたり、福祉車両での送迎支援も行うとのこと。

特別支援学校のスクールバスにおけるシステムの問題点について話題にしたことがありました(→2017/9/15投稿「医療的ケア児にもっと目を向けて!」)。

しかし、今回のケースでは福祉車両での送迎が可能。

保護者または看護師が子どもの隣に乗れば体調が急変した時にすぐに対応できます。

これも少ない人数ならでは。定員の20名に達するまでには保護者も看護師も同乗できるスクールバスのシステムを作っていってほしいな、と思います。

保育園で成功例を作り、それが特別支援学校にも波及すれば、子どもの学習保障につながり、保護者の負担も減ります。

また、この保育園、

「集団生活が可能な医療的ケア児・障害児で、主治医の指示によって看護師が単独でケアできる子ども」

という基準があり、入所判定審査会で入園の可不可が決まるそうです。

グループ分け、というのはある程度仕方ないにしても、基準を段階的に設けてより個別対応のクラスを作り、多様な障がいに応えるようになったらいい。

せっかくの新しい取り組み、モデルケースとして同様の課題を抱える現場に画期的な変化をもたらすようになればいいなあ。

医療的ケアのある子に、集団生活が当たり前に送れるような保育園生活を!

視線入力装置と映像楽器+SHJアーティスト=ジャズセッション!

学びサポート通信「東京都Aさんのお宅で音楽の授業」〜

スマイリングホスピタルジャパンは、小児病棟や施設を訪問してアート活動を行っていますが、医療的ケアを受けながら在宅生活を送る重度の障害がある方に、さまざまな支援機器を使って学びの時間を提供する事業も行っています。

やりとりを通してコミュニケーションを深めながら一緒に学習しています。

子どもに学びたいことを教えてもらい、そのためにどんな支援が必要かを互いに探り、よりよい環境を設定します。

筋ジストロフィで右手の人差し指のみでパソコンを駆使するAさんは、プログラミングの授業と音楽の授業を受けています。

パソコンで調べものをするのが趣味というAさん、パソコンでの作曲にも挑戦しているほど活動的な方です。

今日は音楽の日。

ボランティア学習支援員とSHJアーティストのシンガーソングライターによる授業です。

SHJアーティスト・シンガーソングライターの石橋和子さん

映像楽器と視線入力装置を使って音楽セッションを練習しました。

指先の動きではどうしても音楽に合わせたテンポとずれてしまうため、より意にかなう速度で入力できるように、視線で反応する装置を使います。

持ち込んだ支援機器は、

🌀視線入力装置Tobii Eye Tracker 4C

🌀液晶モニター

🌀パソッテル(モニター固定脚)

そして映像楽器は、

🌀「サウノスヴァルカ」

「サウノスヴァルカ」は、簡単な操作で和音やアルペジオを自由に弾くことができる映像楽器。

画面に、音にシンクロして抽象的なグラフィックが表示され、音と映像を同時に即興演奏することができる楽器です。「サウノスヴァルカ”Sounos Valka」

「サウノスヴァルカ」の一画面

まずはパソッテルで、液晶モニターをAさんの側臥状態に合わせた角度と距離に設定し、視線が反応するかチェック。

左上に見えるのが、パソッテルで液晶モニターを角度約90度に固定したところ。側臥のAさんが見やすい角度に微調整できます。

「サウノスヴァルカ」をいろいろ試してもらった後、コードの出力と音の長さ調整の練習をします。

まずAさんが、視線を持って行きやすいコードで始まる曲をアーティストがセレクト。

Aさんがジャズやクラシックなどに造詣が深いことを知っているアーティストが、

Amコードを受けて歌い始めたのは迫力あるブルース

“Summertime”。

3つのコード

Am

Dm

E7

を使って、視線の移動とそのタイミングを合わせる練習を数回行い、

見事セッションを成功させました。

録音しておいた2人の作品は何度聴いてもしびれます。

選んだ和音を、時には1章節分伸ばしたり、時には8分音符にして4度ジャジャジャジャーンと鳴らしてみたり。微妙にコードをずらしてアレンジしてみたり・・。

ジャズブルースは、速度も歌詞の乗せ方もアーティストのフィーリングによるアドリブで行い、それがまた絶妙な音楽性を生みだします。

このメカニズムが、支援機器を使ってセッションするときにぴったりとマッチするのです。

Aさんの選ぶコードとアーティストのボーカルが見事なハーモニーを生んで、オリジナルの作品となりました。

視線で画面を追うのはかなり疲れるはず。しかし、

少し休む?

という声かけに

大丈夫。

じゃ、もう一曲。

と、こちらもつい欲が出ます。

Aさんも慣れてきて、

選ぶコードも増えました。

それなら!

と、石橋さん。

C

Am

F

G

の4つのコードなら、これがぴったり!と、

“Stand By Me”

をセレクト。

お母さんもスタッフもシェーカーで参加。

クライマックスを受けてここで授業終了。

のはずが、

GarageBandも試したりしてつい最後まで熱が入りました。

今後Aさんは、これまでの指先でのパソコン操作に加え、視線入力による操作を使い、組み合わせることで、汎用性、速度そして体力面でも自由度が増すでしょう。それにより、自分の世界をより広げることができればと願っています。

調べることが好きなAさん、知りたいことにさらにリーチし、挑戦することも増えて行くはずです。

テクノロジーは、ほかならぬ、不自由を抱える人が自分の世界を広げるために進歩しているのだと、常々思っています。それが第一の目的でなければならないと。

身体が思うように動かない人にとって、視線を動かすだけで意を叶えられる・・・素晴らしいことです。

私たちが考える支援とは、健常者を手本に、健常者に追いつけ、というのではなく、その人ならではの、その人らしさを大切にした世界の広げ方を一緒に追い求めていくことです。

SHJは、支援方法を個別的に探り、ITや「その子の状態に合わせた」手作りの学習キットを使って、一人一人の思いを叶えられるよう、「学びサポート」に取り組んでいきます。

Smiling Hospisal Japan Official Website

〜医療的ケア児と特別支援学校〜

胃に開けた穴から栄養注入するなどの医療的ケアを受けながら過ごし、言葉が発せない子どもたちも、学校に行けば表情は生き生きとし、体調が落ち着くことが多いものです。

友達の声や学校のおとを聞けば気持ちも上向きになるのでしょう。

そんなエピソードの一つを

5/12投稿の「奇跡が奇跡でなくなるとき」

で紹介しました。

しかし、重度の障がいを持つ子どもたちを取り巻く社会、行政の対応には折に触れ「現状を本当にわかっているのか!」と思わざるをえません。

新生児医療の発達で助かる命が増え、在宅の医療的ケアは増加しています。厚生労働省の研究班によると、医療的ケアが必要な0~19歳の子どもは推計で1万七千人余り、10年前の1.8倍だそうです。

特に十分な呼吸ができず、酸素吸入や人口呼吸器などの呼吸管理が必要な子が急増し、重症化が進んでいるとも。

また、在宅ケアを担うのは主に母親。

医療機器に囲まれ、十分な医療知識を持たない中、愛情を支えに長時間のケアを続けています。

夜中も、たんの吸引や褥瘡を防ぐための体位変換などのために、平均睡眠時間は4時間にも満たない。自分の健康に不安を感じ、腰痛、腱鞘炎、鬱などの自覚症状がある母親も多いといいます。

このような医療的ケア児や母親の事例は新聞でよく見かけます。

障がいのある子どもたちにとって、学校に通うのは一番の楽しみ。

特別支援学校は、医療的ケアを受ける子ども、寝たきりで発語のない子どもにとっても、先生や他の生徒との触れ合いや学び合いを通して情緒の安定や喜びがあり、社会性や体力を養う場所です。

医療的ケアの担い手、母親たちにとっても、気分転換、母親同士の情報交換、そして仲間との息抜きの場とも言えます。

特別支援学校への通学は主にスクールバスですが、医療的ケアの必要な子どもは対象外である地域が多いのです。そんな子どもは在宅訪問教育部門に籍を置くことになる場合が多く、東京都では週平均6時間の授業。利用できたとしても、長時間の通学時間中に体調が悪くなり救急搬送となる場合もあると聞きます。

ただでさえ、体験や主体的に活動する機会が限られている中、教育の機会確保、通学の安全確保という健常児にはあたり前にある権利が、障がい児には保障されていないのが悔しい。

障害者差別解消法、合理的配慮は、子どもたちにとって、残念ながら今の状態では絵に描いた餅でしかないようです。

障がいのある子どもたちが当たり前に学校へ通うためには・・ということにもっともっと行政は向き合ってほしい。実態を知ってほしい。

ケアを受けながらも子どもは日々成長するのです。

健常児の通う学校の3校に1校でもいい。専任の校長を置く特別支援学校を併設しては?

地域密着化することで長時間のルートをスクールバスで過ごす必要がなくなり、2割の活用にとどまっている副籍制度(地域の普通校と特別支援学校の交流制度(→10/3投稿「副籍制度、機能してる?」参照)が活発になり、ノーマライゼーションにも寄与できるでしょう。

実現させるためには看護師など医療者の配置、という大きな課題にぶつかるでしょう。十分な人材を確保し、学校で行える医療的ケアの緩和(→10/18 投稿「医療的ケア児と家族の現状」 9/15投稿「医療的ケア児にもっと目を向けて!」参照)にも着手してほしい。進歩する医療技術に伴う医療的ケア児の増加、そしてその対応は待ったなし。

改革を本気で!進めていかなくてはならないのは自明のこと。

教育問題の中でも最重要課題の1つだと痛切に感じます。