芸術鑑賞会という非日常を味わってワクワクする子どもたちの表情が忘れられないものになりました。この非日常を日常にできたらと念じて花開いたのがまさしく、スマイリングホスピタルジャパンの活動、と今になって思います。
東大病院から歩いて行ける遠足のメッカ、上野動物園は毎年みんなが楽しみにする人気スポット。
担任をしていた中2の男子Jくんは、病状がかなり進み、当日まで参加できるかどうか医師も判断を躊躇するような状態でしたが、「みんなと一緒に行きたい!」という懸命の訴えが功を奏し、参加にこぎつけました。「少しでもつらかったら必ず戻る」という条件付きで。
道中、車椅子を押しながらおしゃべりにも花が咲きました。
ひょうきんなポーズのゴリラや動かないことで有名な鳥「ハシビロコウ」の前でワッハッハと大笑いしたのもつかの間、もうすぐレストランでランチ、という頃になって不調を訴えました。
急いで車椅子の向きをくるりと変え、Jくんと私は病院へ。
途中にあるイソップ橋だったか、下りのかなりきついスロープで、巨漢のJくんを押して(引いて?)坂を下るのにとても苦労したこと、はっきりと覚えています。
体の大きいことに加え急斜面のせいで重力に耐えきれなくなりそうなのを懸命に耐え・・この手が離れてしまうんじゃないか・・などと決してあってはならないことを想像し責任の重さに恐怖さえ感じたほどです。
考えてみれば体調が急変した生徒(患者)を教員一人で病院へ連れて帰るなど、なんとリスクの高いこと。
急がば回れ、迂回してなだらかな道を選ぶなど安全策をとるべきだったのに、辛そうなJくんの様子に、最短距離を行くという愚行に出てしまったのは大きな反省となりました。無事に病室に送り医師を呼ぶことができた時はホッと胸をなでおろしました。
しばらくしてJくんに笑顔が戻ったことを確認し、再び上野動物園へ。
他の生徒たちのところへ戻る途中、生温かい風とともに誰かの視線を感じて
ふと見ると、あの「ハシビロコウ」がいたずらっぽくウインク!?したような・・・。

さっきは笑ってごめんなさい!