SHJヒストリー

〜SHJヒストリー19 エリーは心配症〜

「エリーは心配症だからメールしたよ」

一度も担任しなかった中学生Kさん。

だけどものづくりが大好きだったから放課後や自立活動の時間に、よくにわか手芸部を作って盛り上がった仲だ。

きっかけは英語の個別授業で意気投合したこと。

小学校高学年から学校へ行ける状態ではなかったから、学習が大幅に遅れてしまって英語もアルファベットからの練習。地道に頑張って単語から、そして基本文の暗記・・・。

そんな二人のペースの授業だったから、ついつい横道それて授業の半分が雑談で終わってしまったり。あんまり勉強が好きでなかったから、「ここまで終わったら早めに切り上げてさっきの話の続きをしよう・・」なんてしょっちゅう。

身の上話やら好きな芸能人の話に持って行くタイミングを見計らいながら単語練習する、気もそぞろの彼女に「集中!集中!」なんて注意しても迫力なし。

それでもそんな企みに、その手には乗らない!

と踏ん張ってみたものの、すっかりその術中にはまってしまったこと数え切れず。

高校受験を意識する頃、志望高校に制服がないことを知った彼女は、女子中学生の憧れ「なんちゃって制服」を着たい、と言い出した。

そういえば娘が着ていたなんちゃって~がクローゼットのどこかに残っていることを思い出し、Kさんのサイズに裾詰めをし、紺のVネックのカーディガンはユニクロのセールで調達。

一教員がこんなことをしてはいけないことを知りつつ、家庭で準備できないことにいつものお節介が顔を出し、秘密裏のうちに彼女の高校デビューの衣装が着々と揃っていった。

ベッドサイドのカーテンレールに吊るして入学式を楽しみにしていたKさん。

彼女の卒業と同時に教員を辞め、気になる生徒たちを一人ひとり思い浮かべる日が続いたが、やはりKさんは一番心配な生徒のひとりだった。

入院中、手を動かして何かを作っている時間はいつも笑顔で饒舌だった、そんなKさんとの時間もSHJへ駆り立てた大切な思い出。

転院などのタイミングのせいで1年間高校へは行けなかった彼女だが、そのあとさらに1年ほど経った頃、

エリーは心配症だから・・と2年ぶりの連絡が来た。

今ね、◯◯高校へ行ってるよ。すっごく楽しい。看護師になる夢、続いてるよ。

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