龍がどういう姿、形をしているかは知っているだろう?
龍には、ツノはあるけど耳はない。
龍はツノで音を感知するから、耳が必要なくて退化したんだ。
使われなくなった耳は、とうとう海に落ちてタツノオトシゴになった。
だから、龍には耳がない。
聾という字は、それで「龍の耳」と書くんだよ。
(丸山正樹著「龍の耳を君に」P.11抜粋)
本の虫
読書が大好きな私だが
一度自著を上梓している手前
2冊目・・・
と胸をよぎらないこともないが
ブログアップのスローぶりが物語る通り
書く方の意欲は低下気味のこの頃。
(とはいえ、企画書なるものは作っている😅)
いずれにしても活字(紙媒体)を読むのは新聞含め好きだ。
ジャンルは問わないが最近は小説が好きで
川上弘美
角田光代
三島由紀夫
よしもとばなな
吉村昭
小川糸
湊かなえ
柚月あさこ
森絵都
などなど
並べきれないほど読み耽っている。
そんな中、私の中で大ヒット中の著者がいる。
続けて何冊も続けて読んでいる。
作家名は丸山正樹。
作家 丸山正樹
丸山正樹氏は
松本清張賞の最終選考となった
「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士(2015)」
でデビューし、その後
デフ・ヴォイスシリーズとして
龍の耳を君に(2020)
慟哭は聞こえない(未読)
わたしのいないテーブルで(2025)
を世に出した。
CODAが伝える社会課題
主人公はCODA(Children of Deaf Adults)
=耳が聞こえない、あるいは聞こえにくい親のもとで育った「聞こえる子ども」。
家族で自分以外全員がろう者という環境で育った彼は
幼い頃から両親と兄の通訳をしてきた。
生活の中で身につけてきた手話を使って
手話通訳士をしている。
依頼を受ける法廷や警察での通訳を通し
ろう者・聴者間の葛藤の中で
自らのあり方を模索し続ける主人公。
シリーズは一貫して
小説、というよりルポルタージュに近く
ともすると埋もれてしまいそうな様々な社会の課題を
手話通訳士の視点からほり下げる
奥の深い読み物になっていて
断然おすすめのシリーズだ。
一つの課題に取り組むと様々な壁に気づく点でも共感がある。
日本手話と日本語対応手話
読み進める中で
日本手話*と日本語対応手話**の存在による
当事者間の分断や葛藤という課題があることを知った。
本人が好むと好まざるとに関わらず
家族の考え方や学校など
その人の置かれた環境や場面に応じて
使われる手話の種類が違うという事実。
伝えづらさ、分かり合えなさに
個々の困難にプラスして構造的な問題があることを
本シリーズは伝えている。
この事実が当時者にとり
さらなる社会参加の妨げになることは容易に想像がつく。
日本手話*:ろう者(主に生まれつき耳が聞こえない方や、手話を第一言語とする方)の間で自然に育まれた独自の言語。日本語とは異なる文法(語順)や、表情・体の動きも重要な要素
日本語対応手話(手指日本語)**:日本語の語順や文法に合わせて手話単語を並べる表現方法。声を出して話しながら同時に手を動かすことも多く、中途失聴者や難聴者、聴者(耳が聞こえる人)の間でよく使われる
CODAあいのうた
映画「CODAあいのうた(2021 米国)」を随分前に観た。
家族の中で一人聴者である少女が「歌う」という
夢を実現させるまでの葛藤を描いている。
家族のために夢を追うことを諦めかけるが
周りの後押しを受けて
自分の世界への扉を開いていくストーリーだ。
「わかり合えない」という共感
小説「デフ・ヴォイス」
映画「CODAあいのうた」
を通して
わかり合うためのことばの重みと
ことばでは伝えきれない心のひだを
分かり合えないもどかしさを同居させながら
誰もが抱えていることを
作者は表現している。
ところどころで
ヤンクケアラーやきょうだいの課題とも重なり、
誰もが持つ日常の中での
分かり合えなさや誤解で苦しんだ経験を重ねて
共感するのではないだろうか。
冒頭で紹介した
主人公がろうの子どもに伝えた
龍がタツノオトシゴになった話は
とても印象的でじんと心に残る。
参考:
手話についてとその歴史について 日本ろうあ連盟
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