子どもが大切にされる平和な社会へ

〜ジャングルジムはどこへ行った?〜

週末、孫3人を預かって近くの公園へ。

この辺りは都内でも緑豊かで児童遊園や公園が点在していますが、私が小さい頃によく遊んだジャングルジムを見かけなくなりました。落下事故の多発を受けて安全策のために撤去され始め、今では10年前の半数しかないといいます。

ジャングルジムとは名前の通り、ジャングルをイメージ、都会にいながら自然の中で体得するバランス感覚などを培うために考案された画期的な遊具ではなかったでしょうか。

立方体がいくつも積み重なっていて、ふと所々、パイプが渡されていない部分があって、ドキッとするスリルも味わいながらいろんな遊びに発展したものです。

絶対に地面に足をついではいけない空中鬼ごっこ、秘密基地遊び、一番高いところを誰が占領するかの競争・・・。この三次元の立体空間は、まるでサル類が開拓した森林そっくり。

心理学者の河合隼雄氏(1928~2007)は、著書『子供と自然』の中で、こう言っています。

サルの祖型は、樹上生活に対する様々な適応形態を発達させた。第一に枝をつかむことから、親指と他の指が向かい合い - 拇指対向性という – 物を自由につかむ指の能力が発達した。五本の指がバラバラに動き、手を自由に使う、道具使用と製作にかかわる基本体制ができあがった。

ジャングルジムで遊ぶことは、しっかり掴む握力に加え、高いところまで登っていく脚力と腕力、四肢を使った空間でのバランス、位置関係の学習、姿勢の発達など、様々な運動能力を伸ばすことにつながります。

  • のぼる、降りる・・普段の生活の中では使わない筋肉をたくさん使う。
  • 狭く入り組んだスペースに体をくねらせながら一生懸命入っていく・・上下だけでなく、斜め移動という三次元的な体の動かし方を学ぶことで体幹を強くし、姿勢を安定させる。視覚に頼らないボディイメージもできる。
  • それぞれの手足を独立させて動かす・・複雑な体の動きを学ぶ。

 

鉄で出来ている、ということにも意味があります。

ぶつけたら危ないじゃないか、と転ばぬ先の杖を出したくなりますが、可愛い子には旅をさせよ。何度か頭をぶつけて、「痛い」経験をする。それによって、硬い鉄枠に当たらないようにくぐり抜けるには、体をどう動かせばいいか、ということを学習するチャンスと捉えます。

ジャングルジムという危険な?!遊具を、なんとか頭を打たずに足を滑らせずに、そして落ちずに!好きなところへ登っていく、そして足を踏み外さずに降りていく、そして誰よりも高いところを目指して360度のパノラマを楽しむ・・スリル満点!なんと楽しかった思い出。

体幹を鍛えることで姿勢が良くなるだけでなく、怪我をしなくなる、そして集中力もアップするとも言われます。実はジャングルジムよりはるかに事故が多いのは滑り台、というデータも東京消防庁のサイトで見つけました。

危険、危険と排除してぬるま湯になった環境で育つ子どもが、たくましく自立していけるのか・・。

昔取った杵柄。そろそろ孫たちに木登りを教えようか・・。

参考文献

  • 河合雅雄 1990『子どもと自然』岩波新書.

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