障害のある人のいのちとことばを伝える「つながり映画祭」第9回目は15日(金)まで、アップリンク渋谷で!
「経済性・効率性から一面的に人間の価値を決めつけ排除するのではなく、人間のありのままの姿を葛藤しながらも受け止め合う姿」
を描き出す国内、海外の映画を上映しています。
期間中10種類の作品が公開されますが、そのうち3つはバリアフリー上映。字幕はもちろん、全ての情景が副音声ナレーションで説明されます。
河瀬直美監督の「あん」を観たいという理由の他に、このオープンシステムとも呼ばれるバリアフリー上映を体験したかったというのがもう一つの理由。
目を閉じて音と会話とナレーションでスクリーンの様子を思い浮かべてみる。
耳を塞いでスクリーンの映像と字幕で映像の奥行きをイメージする。
初めての体験でした。
正直、最初はナレーションを邪魔に感じました。
映像だけで登場人物の心情を想像するのに慣れているせいか、細かな説明がノイズとなってしまう。目からも耳からも情報をいとも簡単に手に入れることのできる立場ってこんなにわがままなんだ。
そのうちだんだんと慣れてきて物語の中にぐいぐいと引き込まれていき、気づくとナレーションがちっともうるさくない。作品の素晴らしさがそうさせたのは当然のこととしても、不思議でした。目の不自由な方、耳の不自由な方、そしてどちらでもない人たちが一つの作品を、時に笑い、涙しながら観ている。一体感のようなものがそうさせたのかもしれません。
人はユニバーサルデザインの中に自然と溶け込み、気持ち良く共存できる。インクルージョンの力があるんだな~と身をもって感じました。
「あん」
樹木希林演じる老女はどら焼き屋のアルバイト募集ポスターに吸い寄せられ戸を叩く。最初は戸惑う永瀬正敏演じるどら焼き屋店長だが、老女の心の籠った美味しい粒あんが人気となり急に繁盛し始めた。しかし、この老女が昔ハンセン病を患っていたという噂がものがたりを急展開させ核心に迫っていく。
「世間は怖いよ」
店長のつぶやきは社会の無理解や差別に対する心の底からの叫びでした。
エンドロールさえも終わったというのに、観覧席は動かない。
しばらく席を立てずに涙を拭っていたのは私だけではありませんでした。
バリアフリー上映を通してこころのバリアフリーをも訴える素晴らしい作品でした。
つながり映画祭 http://www.uplink.co.jp/movie/2017/49469