「椅子」というのは、
家具の中で人間の体に一番密着するという点で、
とても身近な親しみのある道具です。
日本は畳の文化のためか、みんな揃い、が心地よいという感覚からか、
ダイニングやリビングルームでは同じデザイン同じ大きさの椅子やソファを揃えることが一般的です。
椅子を当たり前に生活に使ってきた欧米では、
家族一人ひとりにmy own chairがあり、
デザインも形も自分の身体にあったものを持つことが多いそうです。
座るととても落ち着く友達のような存在だとか。
家の中のお気に入りのコーナーを、
椅子ごと陣取って読書を決め込んだり。
日本でももちろん、家具店に行って色々試してみて、
心地よいものを選ぶというのは今では当たり前のことですが。
私も家具が好きで、よくインテリアショップを見て歩きます。
中でも椅子は、形が美しく表情がありデザインも豊富だから、
椅子売り場にいると、芸術に囲まれているような気分になります。
座り心地を試してうっとり、なんてことも。
前置きはさておき、
「椅子が奇跡を起こす」ということを、
ドキュメンタリーで知り、衝撃を受けました。
脳性麻痺のために自由に動けず言葉もうまく発せられない人が、
自分にあった椅子に座ることで
不随意運動も収まり、話すこともできるようになったという、
まさに奇跡の映像です。
脳性麻痺があると意識的に動こうとすると逆に筋肉に緊張が入り、
意に反した動きになったり硬直したりということが起こります。
これまではこの不随意運動を、力ずくで押さえ込もうとするが如くに
ベルトできつく固定するしかなかった・・。
本人がどうしたいのかに思いを巡らす余裕も周りになく。
周りはなんとかしてあげたい、本人は自分をわかってほしい
やりたいことをやりたいのに・・。
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脳性麻痺とは・・
手足の筋力が弱く、だんだんと筋肉の緊張が強くなるために、
スムーズな動きが出来なくなる
食事をしたり、歩いたりすることが難しく、
股関節脱臼から股関節痛が起こり、日常生活に支障をきたす
喉や背中の筋肉の麻痺が強い場合は飲み込みづらくむせやすかったり
背中が曲がる側弯症になることもある
不随意運動もあり、手足の動きを自分ではコントロールできなくなる麻痺が生じる
自分では「止めたい」と思っても、手足や首の動きを止めることができない
顔面の筋肉も麻痺し、言葉でのコミュニケーションが難しい方も少なくない
とにかく大変辛く苦しい状態
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そのような人たちに寄り添う東大阪のある作業療法士が、本人はもちろん家族や周りの人のやり場のなさを解決したのです。
「姿勢」に着目し、
一人ひとりの体に合わせた椅子を作ることで。
不随意運動のために型取りから苦労するも、個別の症状に合わせて解決を。
用途に合わせたオーダーメイドも手がけ、本人の夢も叶えます。
笑顔を見たい一心で。
不随意運動に疲れ果てていた人の動きがピタリと止まった
それに伴い表情も明るく穏やかに、そして笑顔も見られるように
願いが叶ったことで嬉し涙を流す人
姿勢が楽になったことで言葉を発することができるようになった人
たくさんの奇跡に目が釘付けになりました。
この作業療法士は、医師だったお父さんの遺した言葉を生きる指針にしていると紹介していました。
「気づいているのに何もしないのは、気づかないより悪い」
年の瀬に、生き方のお手本に出会え、新しい年に向け、
自分の使命を新たに胸に刻むことのできた
嬉しい衝撃でした。
蛇足ですが、
自分専用の椅子、自分の姿勢に合った椅子とともに生活しているから
欧米の人は姿勢がいいのかもしれません。